“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
高3FW西川潤、久保建英の背中を追う。
「僕には悔しさをぶつける場所がある」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/06/27 10:30
2年連続のインターハイ出場を決めた桐光学園高校3年・西川潤(10番)。プロ、U-17W杯、高校と忙しいシーズンになりそうだ。
無力さを痛感した日韓戦。
次々と沸き起こる葛藤の中で、彼にとって強烈に心に残る出来事があった。U-20W杯で敗れた韓国戦だ。
「日本代表の一員として責任を感じたし、ここで活躍したいという気持ちが強すぎた。ボールが足につかなかったことも感じていたし、韓国戦は『行かなきゃいけない』という気持ちが強すぎてファールが多くなってしまって、自分でも空回りしていると感じていました」
それでも西川はこの試合でチャンスに絡んでいた。
44分に左サイドを突破したFW宮代大聖の動きに反応し、折り返しに対してゴール前に飛び込んだ。「ヘディングをするにはボールが低かったので、お腹で押し込むイメージだった」が、ボールがうまくミートせず、DFにブロックされた。続く63分はボールキープから宮代にマイナスの折り返しを送り、69分にもDF3人を引きつけると、内側を上がってきたMF藤本寛也にパスをつないでチャンスを演出した。
だが、いずれもゴールにつながらなかった。
0-1で迎えた89分に訪れた最後のチャンスも、クロスを相手DFに当ててしまい、ふいにした。
「クロスの時、(相手のマークを)外してからすぐに上げないと相手の足が出てくる。仕掛ける時も加速しないといけないのに、うまく対応されてしまった。特に(韓国の10番の)イ・カンインには自分のプレーと心理状況を見透かされてしまっていたように感じました」
4試合中3試合に出場し、ノーゴール。結果を残せず、失意のまま日本に帰国をした。帰りの飛行機の中で西川は複雑な想いを巡らせていた。
「もしこれがA代表だったら……」
「細かいプレーが勝敗を分けるんだなと。『何がダメだったのか?』『どうすればよかったのか?』と考えているけど、まだ答えが出ていません。気負いすぎずに、楽しむべきところをうまく整理してやれていなかった。単純に自分の実力が足りなかったと考えるのか、コンディションのせいなのか、環境の変化で疲弊していた自分がいたのか。それはまだ分からないし、それを言い訳にしたくないという自分もいる。考えることは多いです」
モヤモヤを抱えたまま、C大阪、桐光学園、そしてこれからはU-17日本代表として新たなスタートを切らないといけない。辛かったのは帰国してからだった。
「日本へ帰ってきて、周りからは『どうだった?』と聞かれることが多くて……。友達からも『調子が良くなさそうだったけど』と聞かれても、『そうだね……』としか言えなかった。経験した人にしかわからない難しさもあるとは思うけど、でも周りの人からそう見えるのなら仕方がないことですし。
それに僕は見ていませんけど、ネットやSNSなどで『なぜ西川を使っているのか?』とか、『アジアMVPなのに』などと書かれていることが、嫌でも耳に入ってきた。仕方がないと分かっていましたけど、悔しいというか、ここまで言われたのは初めてで。プロの世界はこういう世界だなと感じた。
もしこれがA代表だったら……、もうとんでもないことになるのだろうなと。上の選手は物凄い世界で戦っているんだなと思った。そう思うと、そこに行くためにこんなことで落ち込んでいてはダメだし、絶対に見返すという気持ちになっています」