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<JTマーヴェラスを支える未来の力>
「新世代躍動」 林琴奈×ヒックマン・ジャスティス×西川有喜
posted2019/07/11 11:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Makoto Hada
安定したプレーでチームの柱に。
林琴奈
日本バレーの長いリーグの歴史の中でも、“決勝戦がデビュー戦”という選手はそうはいないだろう。
2017/'18V・プレミアリーグでファイナルに進出したJTマーヴェラスは、ファイナル第1戦で久光製薬スプリングスに敗れた。あとがなくなった第2戦で吉原知子監督は、まだ高校の卒業式も終えていない内定選手だった林琴奈を先発に抜擢した。
「死ぬかと思いました。心の中でめちゃくちゃ焦っていました」と林は振り返る。
しかし動揺は表情に表れることなく、堂々としたプレーでコートに立ち続けた。
「自分では顔に出ていると思っているんですけど、ポーカーフェイスだと言われます。顔が薄いからだと思う」と苦笑する。
監督から「遠慮するなら、いらないから」と。
'18/'19シーズンはレギュラーに定着。セッター対角に入り、守備の中心を担いながら、要所で得点を決めた。ただ、ファイナルには届かなかった。ファイナル進出をかけて東レアローズと戦ったファイナル3では、第1戦に勝利したが、第2戦は敗れ、ゴールデンセットも奪われた。
ファイナルで敗れた1年前よりも、悔しい敗戦だったと林は言う。
「やっぱり長くみんなとバレーをやった分、このメンバーで勝ちたい、という気持ちは強くなっていましたから。攻撃がレフト一本になってしまっていたので、その時にセッターの(田中)美咲さんにもっと、『自分(ライト)に持ってきてください』と助けるコールをしていれば……。そういう言葉だけでも安心させてあげられたと思う」
そう悔やむのは、ルーキーとしてでなく、柱の1人としてコートに立っていたから。安定した守備と勝負強い攻撃はもはやJTマーヴェラスに欠かせない。積極的に前に出る性格ではないが、必要なことはしっかりと伝えて周りを動かすこともできる。
「『歳は関係ない。遠慮するなら、いらないから』と監督に言われていますから」
吉原監督は「いつまでもお客さんでいるわけにはいかない、発言しなきゃ、というものが出てきたんだと思います」とうなずく。ただ、期待ゆえに指揮官の要求は高い。
「やはり攻守の軸にならなきゃいけない選手。針の穴を通すように狙ったところに打てる、といったものを身につけていかないと、大きい選手には太刀打ちできない」
林自身は「ミスを引きずって崩れることがあるので、切り替えを早くして、気持ちの部分で誰にも負けないようにしたい」と課題を掲げ、強い柱になるべく進む。