酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
大谷翔平が達成、サイクル安打と運。
イチローや長嶋茂雄も実は未達成。
posted2019/06/20 07:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Getty Images
今年はサイクル安打マニア(そういう人がいるかどうか知らないが)にとっては、堪えられないシーズンになっている。日米で面白いサイクル安打が出ているからだ。
まずは4月9日、NPBの阪神・梅野隆太郎が甲子園でのDeNA戦でサイクル安打を達成した。
一般的に“鈍足”とされる捕手のサイクル安打は非常に珍しい。
NPBでのサイクル安打は69人、計74回あったが、過去の捕手では門前真佐人(大洋/1950年6月27日、中日戦「6番・捕手」)、田村藤夫(日本ハム/1989年10月1日、ダイエー戦「8番・捕手」)、細川亨(西武/2004年4月4日、日本ハム戦「8番・捕手」)の3例しかなかったのだ。
MLBでは、6月13日にエンゼルスの大谷翔平がレイズ戦で達成した。日本人選手では史上初だ。そして今季マウンドには上がっていないが、投手登録の選手としても史上初である。さらに翌14日にはインディアンスのジェイク・バウアーズが、タイガース戦でサイクル安打をマークした。
2日連続での達成は、1912年6月9日、レッドソックスのトリス・スピーカーがセントルイス・ブラウンズ戦で記録し、翌10日にニューヨーク・ジャイアンツのチーフ・マイヤーズがカブス戦で記録して以来、107年目の珍記録だ。
「運」の要素はたしかに大きいが。
ちなみに日本では、1985年5月21日に近鉄・栗橋茂が南海戦で、翌22日に西武・岡村隆則がロッテ戦で達成している。それどころか2003年7月1日には、ヤクルト・稲葉篤紀が横浜戦で、ダイエー・村松有人が近鉄戦でまさかの同日達成。そして翌7月2日には阪神・桧山進次郎が中日戦で達成している。ここまでくればサイクル安打ラッシュだ。
「サイクル安打は『運』の要素が大きいからね。大記録とは言えないんじゃないか」と訳知り顔でファンは言うかもしれない。確かにそうなのだが、数々の記録を愛する我々日本の野球ファンは、半世紀前まで「サイクル安打」の存在さえ知らなかったのである。