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“1イニング”に懸けるオリ守護神。
増井浩俊「リリーフの方が楽しい」。
posted2019/06/15 10:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
6月1日の北海道日本ハム戦の試合後。京セラドーム大阪の地下駐車場で、オリックスの守護神、増井浩俊は記者に囲まれていた。
「フォームのバランスが悪かった。調子が悪い時も、悪いなりの工夫をしていかないといけない」
冷静に、淡々と語った。
その日、オリックスは8-5と3点リードして9回を迎えたが、その回マウンドに上がった増井が3点を奪われて同点とされ、延長12回引き分けに終わっていた。
それでも5日後のDeNA戦で、増井は再び9回のマウンドに上がると、1点差を守り切った。
「しびれる場面で投げていたい」
クローザーとはつくづく過酷な役割である。野手が得点をもぎ取り、先発や中継ぎ投手がつないできたバトンを最後に受け取って、リードを保ったままゴールテープを切らなければならない。追い抜かされでもしたら、それまでつないできた努力を無にすることになる。
増井は、その仕事を望んでオリックスにやってきた。
2017年のオフに日本ハムからFA宣言した際には、複数球団からオファーがあったが、先発ではなく、抑えを含むリリーフでの起用を提示したオリックスを選んだ。それまで守護神を務めていた平野佳寿がメジャーリーグ・ダイヤモンドバックスに移籍したタイミングでもあった。
「本当に勝負をするなら、(先発より)リリーフの方が楽しい。できる限り、しびれる場面で投げていたい」と増井は語っていた。
しかし移籍2年目の今シーズンは、苦しいスタートとなった。開幕2日目、3月30日の日本ハム戦は、2点リードの9回のマウンドに上がったが、中田翔にタイムリーを浴びて追いつかれ、延長の末引き分けとなりチームの今季初勝利が消えた。4月7日の東北楽天戦では、9回に3点差を追いつかれた。
ただ、増井は「気にしてなかったです」と振り返る。