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群馬・布啓一郎vs.鳥取・高木理己。
市立船橋「師弟対決」で溢れた思い。
text by
渡辺功Isao Watanabe
photograph byIsao Watanabe
posted2019/06/13 07:00
“師弟対決”は群馬・布啓一郎監督(左)に軍配。試合後、言葉こそ多くなかったが、両者は握手で健闘を称えあった。
恩師との対決も、私情はなし。
昨シーズン、J3で3位の鳥取と5位の群馬。当然、今シーズンはJ2昇格を目指す両チームだったが、スタートダッシュとはいかず。ここまで3勝3分4敗の勝ち点12で並び、揃って中位に甘んじていた。
それでも前節、鳥取は上位のカマタマーレ讃岐に1-0で勝利。対する群馬もFC東京U-23に4-1で快勝と、掴みかけた浮上の兆しを確かなモノにしたいという、置かれた現状の似通った者同士の顔合わせだった。
開幕直後に話を聞いたときには「もちろんチームの勝利が第一ですけど、やり甲斐と言うのか。長くサッカー界で頑張っていたら、こういう良いことがあるんだな」と、かつての師が率いる群馬との一戦を心待ちにする感もあった高木監督だが、いざゲームが始まると、私情や感傷の入り込む余地はなかった。
両監督テクニカルエリアいっぱいに出て指示を送り、腕組みして戦況を見つめながらも、互いの視線が合うことはない。
対戦後に感じた布さんへの思い。
この日の群馬は、流通経済大出身のFW高澤優也、東京農大出身の右サイドバック吉田将也、ふたりのルーキーが躍動。前半30分に高澤のPKで先制すると、そこから7分間で4得点と一気呵成のゴールラッシュ。
人を替えシステムを替え、なんとか反撃を試みる鳥取を無得点に抑えるだけでなく、後半38分にはカウンターから吉田将也が5点目を奪い、隙なく勝ち切ってみせた。
ゲームが終わった直後には、「ありがとうございました」と握手で健闘を称えあう。それほど多くの言葉を交換した様子はなかったが、時間が経つにつれ、それぞれの立場で、それぞれの想いが沸き上がっていた。
「個人的な感情は持たないようにしてゲームに入りましたし、試合中は考えている余裕はなかったですけど。90分が終わって振り返ってみると、4-0でリードしているなか、しっかりと後半カウンターで仕留めに来るところ。おこがましい言い方になりますけど、そういうところの積み重ねに掛けた時間が、布さんらしいなと感じました。
ガイナーレ鳥取の監督としてではなく、あくまで私個人として、いち高木理己という人間からすると、こういう形でピッチで戦ってみて。あぁ自分はこういう人に教わって、だから勝たせてもらっていたんだな。自分は素晴らしい指導者に育てていただいたんだなと。そうした自分が受けた恩というものを、あらためて感じました」