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U-20W杯日韓戦で悔やまれるミス。
菅原由勢は、必ず壁を越えられる!
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJFA/AFLO
posted2019/06/12 11:15
U-20W杯で韓国に敗れ、うなだれる菅原由勢。悔しい思いを東京五輪、そしてA代表のピッチに立つための活力に変える。
U-20W杯は4戦すべてにフル出場。
ラウンド16で幕を閉じたU-20W杯において、4戦すべてにスタメンフル出場を果たした菅原は、ピッチ上でも冷静に戦況を見て、その瞬間に適したプレー選択をし、かつ二手、三手先まで考えながらプレーしていた。
中でもグループステージ3戦に関して、彼は“影のMVP”と言ってもいい存在だった。右サイドバックとして、高い位置でワイドに張り出すだけでなく、サイドハーフやFW、ボランチの位置を良く見て、インナーラップを仕掛け、ポゼッションに加わり、ときには裏を突き、攻撃の大きなアクセントになっていた。
守っても素早い攻守の切り替えを駆使して、コース限定とボール奪取を見せるなど、チームの動脈の1つとなっていた。
韓国戦では前半は5バックでブロックを敷いてきた相手に対し、右サイドから積極的にクサビを打ち込み、インナーラップを仕掛けてゴールに迫るなど、攻撃において大きな存在感を示していた。
たった1つの痛恨のミス。
だが、84分に彼をどん底に突き落とすシーンが訪れてしまった。
ペナルティエリア内左に潜り込むようにドリブルをしてきたMFチョン・ホジンに対し、菅原はドリブルコースを消す形で相手とボールの間に身体をねじ込みボールを奪った。うまく両腕を使ってチョン・ホジンをブロックしながらキープすると、身体を捻らせて右足で縦パスを送り、ボールを繋く判断を下した。
しかし、そのパスが相手DFチェ・ジュンに直接渡ってしまった。フリーのチェ・ジュンは右足でクロスを送り込むと、FWオ・セフンがヘッドでゴール右隅に流し込み、韓国に決勝弾となるゴールを与えてしまった。
痛恨のミス。筆者は画面越しでしか分からなかったが、試合後のピッチで最後まで起き上がれなかったのが菅原だったと聞いた。W杯のラウンド16という大舞台で、敗戦に直結するプレーをしてしまったのだから、そのショックは計り知れないだろう。
「死の組」を無敗で2位通過した立役者だったからこそ、あまりにも落差の大きい、残酷な結末だった。失意の韓国戦から2日後、彼は成田空港で取材を受けてくれた。
「全体的なシーンをイメージしようとしても、結局最後に頭に残るのはあのシーンです。前半、縦パスを何本か通すことができたと考えても、最後はそこに帰着してしまいます」
彼の口から出たのは、やはり「あのシーン」についてだった。