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小野伸二を上回る衝撃のデビュー。
久保建英と森保ジャパンの収穫。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byToru Hanai/Getty Images
posted2019/06/10 11:40
約20分間のプレーとなった久保建英のA代表デビュー戦。早々に決定機に絡むなど、圧巻の存在感を示した。
1トップと2シャドーの関係。
41分には2点目が生まれる。今度は左センターバックの畠中槙之輔のタテパスを、原口がゴールラインぎりぎりで折り返す。同サイドへ飛び込んできた永井がワンタッチで合わせると、左ポストをたたいたボールはネットに吸い込まれた。
2得点のシーン以外にも決定機はある。35分、ダブルボランチの一角で先発した橋本拳人のタテパスを、左シャドーの南野拓実がワンタッチで永井へつなぐ。ゴール正面からの一撃が、GKを鋭く襲った。
南野と永井に右シャドーの堂安律を含めた3人は、攻撃だけでなく守備でも悪くない距離感でプレーしていた。前線からハメようとして取り切れないシーンもあったが、前半の日本代表はエルサルバドルに1本のシュートも打たせていない。チーム全体がコンパクトにプレーし、危険なスペースを与えていなかったと言うことはできる。
18歳久保建英、投入。
ハーフタイムを挟んで2-0のままゲームは推移し、森保一監督が交代カードを切っていく。59分に畠中と伊東を下げて山中亮輔、室屋成を投入した指揮官は、システムを4-2-3-1に変更する。
日本代表がゴールへ迫っているわけでもないのに、スタンドがどよめいたのは60分過ぎである。ウォーミングアップエリアから、久保が中島翔哉とともにベンチへ向かう。
67分、ふたりが投入される。久保はトップ下に、中島は2列目左サイドに入る。
背番号27を着けた18歳は、登場から6分後の73分にプレーでどよめきをもたらす。永井の負傷で途中出場した大迫勇也からパスを受け、右サイドからドリブルで運んでいく。ふたりのDFに挟み込まれそうになった刹那、内側へ踏み出してマークを外す。ペナルティエリア右から得意の左足を振りぬくと、威力十分の一撃が相手GKの正面を突いた。
久保が放ったシュートはこの1本だけで、得点もアシストも記録できなかった。
だが、データだけでは読み取れない衝撃があった。イージーミスがない。自分でいくべきところと、周りを使うところの判断が適切である。無理も、無駄も、スキさえもないのだ。
それでいて、久保は現時点の最大値を表現したわけではない。周囲とのコンビネーションが深まれば、もっと良くなっていくはずである。10代の選手のデビュー戦としては、小野伸二をも上回るインパクトがあった。