“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-20W杯でスターになるはずだった男。
宮代大聖、川崎での試練を経てA代表を。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byGetty Images
posted2019/06/07 18:00
韓国戦で敵DFに囲まれた中での突破を図る宮代大聖。この悔しい経験は、絶対に無駄にしてはならない。
影山ジャパンの切り札になるはずだった。
チームとしても出色のできだったこのメキシコ戦で、内容・結果ともにMVP級の活躍を見せた宮代は、「影山ジャパンのポイントゲッター」として、その株を大きく上げることとなった。
だが、この試合でコンディション面におけるトラブルが発生し、翌日から全体練習から外れ、イタリア戦も出場できない状態に。イタリア戦翌日の練習から復帰し、韓国戦のスタメンにその名前こそ連ねるまでになったが、所詮万全とは言えない状況であった。
宮代の問題とは別だが、今大会で覚醒したとも言える大活躍を見せていた田川がイタリア戦で負傷。そのまま帰国を余儀なくされてしまっていた。こうなると、宮代はポイントゲッターとしての責任を、さらに自分以外の分まで背負い込むことになる。
「絶対に結果を出してやろうという思いも強かったし、チームの勝利に貢献したいという思いも強かった。重要な時間帯で決め切れる能力というのは、今後の試合でも大事になる。それは続けていきたいと思う」
宮代にとって決して簡単ではない状況が発生する中で、メキシコ戦後にこう語っていた彼の責任が極端に重くなってしまったのが……韓国戦だったのだ。
決して悪くない活躍だったが……。
前述した通り、彼はノーゴールに終わった。
韓国戦のプレー自体は決して悪くはなかった。むしろ、90分を通して、チャンスには必ず彼が絡んでいた。
前半は5バックの前に3ボランチを並べるという、異常とも言える守備固めをしてきた韓国に対し、彼は積極的にブロック内に侵入して、中間ポジションを取りながら、DF菅原由勢、山田、藤本らのクサビのパスを引き出していた。
43分にはDFを背負いながらパスを受けると、鋭く反転して一気に前に出る。このプレーに韓国DFはたまらずファールで倒すことを選択。絶好の位置でFKを獲得している。
後半に入り、韓国が攻撃的な【4-4-2】へとシフトチェンジして、オープンな展開になった時も、宮代は中間ポジションに立って、ショートカウンターの起点を作り出すという役割を果たしていた。
50分にはMF齊藤未月のロビングに反応し、ダイレクトシュート。GKが弾いたこぼれをMF郷家友太が押し込んだが、これはVARの末にオフサイドの判定。
そして78分に彼のもとにビッグチャンスが訪れている。FW中村敬斗のシュートがDFにブロックされたこぼれ球にいち早く反応し、右足を振り抜く。ボールは完全にGKを破って、左ポスト内側に直撃! そのままゴール奥に反発するかと思いきや、ゴールの外にはじき出されてしまった。
そして……この直後の84分に、韓国に決勝弾が生まれた。