“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-20W杯でスターになるはずだった男。
宮代大聖、川崎での試練を経てA代表を。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byGetty Images
posted2019/06/07 18:00
韓国戦で敵DFに囲まれた中での突破を図る宮代大聖。この悔しい経験は、絶対に無駄にしてはならない。
U-20W杯のスターになるはずだったが。
この日韓戦でゴールを決め、チームをベスト8に導いていたら――彼が日本代表におけるこの大会の主役になっていたはずだ。
メディアや日本のサッカー界での扱いにおいても、一気に注目を浴びるようになっていたはずだ。
だが現実は、そうはならなかった。ゴールを奪えなかったことで、大会を去らねばならなくなってしまったのだ。
帰りの飛行機。彼は韓国戦の映像を何度も見返していたという。
「映像を見ながら韓国戦を振り返ったのですが……。やっぱり『悔しい』しか出てきませんでした。自分のポストに当てたシーンも、見返すというよりは、見たくないシーンでしたし、『あそこで決めていれば……』という思いがもっと強くなって、そこで『あ、負けたんだ』という実感がタイムアップの瞬間よりも、その後の時間とか、飛行機の中での時間の方で湧いてきました」
「個で打開したいという思いが」
帰国の途にあった成田空港でのこと。
宮代の表情には、長距離移動の疲れよりも、タイムアップの瞬間から続く「敗戦の悔しさ」がはっきり刻み込まれているように思われた。
「前半、韓国が5バックで、守備も硬かったですし、スペースもない中でもっと自分たちがいい距離感を保って、ボールを回せていれば……。もっといい形で僕もボールを受けることができたと思うので、そういう意味では修正点が多かったし、自分としても……あそこから個で打開したいという思いが強かったので。
でも、(韓国の)人数が多いので『サイドから』という形になって、言わば『回しているだけ』という形になってしまったことはあった。もっとゴールへの迫力というか、攻撃への迫力を出していかないと、やっぱりああいう相手からは点が取れない。
チームが苦しい状況だからこそ、FWが個として頑張ることによって、チームを救えたはず。そうなれば、ボランチ、最終ラインと共にもっと前に圧力をかけられる状態になったと思う。もっとそこで自分がしっかりと起点になれていればという思いも正直あります」