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コパ・アメリカ、U-20W杯の裏で……。
“五輪のエース”小川航基が燃やす闘志。
text by
望月文夫Fumio Mochizuki
photograph byGetty Images
posted2019/06/05 11:45
大ケガを克服し、東京五輪へ生き残りを誓う磐田FW小川航基。
大きな期待を背負って磐田へ。
小川は、桐光学園高校3年時に自身2度目の全国高校サッカー選手権に出場。大会ナンバーワン・ストライカーとして注目を集め、2回戦では2得点を挙げ、チームをベスト16に導いた。持ち合わせた高いポテンシャルに目を付けたJ1の複数クラブからオファーを受け、鳴り物入りで磐田に加入。
186cmの長身と甘いマスクに、2度の得点王に輝いたクラブの先輩FW前田遼一(現FC岐阜)が在籍中に付けた「18」を背負い、チームの次期エースとして期待された。
その期待に応えるように、高校卒業前に参加したキャンプ中でのニューイヤーカップでは、清水戦で途中出場から決勝弾。プロ2年目となった2017年4月のルヴァンカップFC東京戦でも、大会最年少となるハットトリックを記録するなど、順調に成長する姿を見せていた。
ところが、エースとして参加した'17年5月のU-20W杯で悲劇に見舞われる。初戦の南アフリカ戦で同点弾を決める順調なスタートを切ったものの、迎えたウルグアイとの2戦目に左ひざの前十字靭帯損傷と外側半月板損傷を負い、長期離脱を強いられた。
大ケガを乗り越え、昨年J1初得点。
長いリハビリを経て、ようやく復帰を果たしたのは約1年後の'18年3月のルヴァンカップ。徐々にコンディションを高めていく中、チームが厳しい残留争いを演じた昨年は要所で存在感を見せていた。
残留争いが熾烈になった終盤、ホームでの第31節サンフレッチェ広島戦では、2-2で迎えたアディショナルタイムに先輩DF高橋祥平が倒されてPKを獲得。蹴ろうとした高橋に「後悔はさせない」とキッカーを譲り受ると、主審から「これがラストプレー」と宣告される。
「何としても決めて終わらなければ」
勝利を期待するスタンドの大歓声で“航基コール”を繰り返す大プレッシャーの中で、見事に自身J1初得点となる決勝弾を決め、貴重な勝点3の獲得に貢献した。
「プレッシャーもあったけど、楽しんだ」と大物ぶりを発揮した小川に、再び大舞台でのPKが訪れた。
最後まで残留争いを演じた'18年のラストゲームは、J2の6位から勝ち上がってきた東京ヴェルディとのJ1参入プレーオフだった。磐田が完全に主導権を握りながらも、0-0で迎えた前半41分。「サポーターの気持ちに応えなければ」と、先発した小川が自ら獲得したPKを右隅に押し込み、これが決勝点となって残留を決めた。