オリンピックへの道BACK NUMBER
羽生結弦がアイスショーで見せた、
精一杯の感謝と確かな回復の証。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2019/05/28 18:00
24日の幕張公演初日、ショーの大トリに登場した羽生はToshl(左)の生歌に合わせ『マスカレイド』を披露した。
「ありがとうございました!」
羽生の演技が終わり、フィナーレを迎えた。出場した錚々たるスケーターたちが姿を見せる。手をつなぎ、四方へと挨拶する。
やがて列をなしてリンクを一周し、観客に手を振り、思い思いに笑顔を向ける。
最後、スケーターたちが1人また1人と退場するのを見送った羽生が、場内と向き合うと、叫んだ。
「ありがとうございました!」
場内すべてに聞こえるようにと、あらん限りの声で放ったこの日唯一の言葉には、5月にしては異例の暑さの中、開場前から列を作った観客の人々への精一杯の感謝があった。
同時に、初日の公演に対する充実感もまた、そこにあった。
そしてこの日の羽生が見せたのは、次のシーズンへの、明るい兆しだった。