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高2の佐々木朗希の速球とフォーク。
監督にも恵まれた“運”が嬉しい。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byIWATE NIPPO/Kyodo News

posted2019/05/29 07:00

高2の佐々木朗希の速球とフォーク。監督にも恵まれた“運”が嬉しい。<Number Web> photograph by IWATE NIPPO/Kyodo News

2018年7月10日、岩手大会2回戦の盛岡三戦で最速154キロを記録した佐々木朗希。冬を越えて、注目度が急上昇した。

試合でフォークを初めて投げた日。

 イニングごとのストレートの平均球速は次の通りだ。

1回/150.5キロ、2回/151.0キロ、3回/148.9キロ、4回/147.4キロ、5回/148.4キロ、6回/145.5キロ、7回/145.4キロ、8回/147.9キロ、9回/140.5キロ

 奪三振11のうち変化球で奪ったのが8個と多く、そのほとんどが1~5回に集中している(5回まで10奪三振)。ストレート主体になった6回以降、三振が1個しか取れていないのは佐々木の終盤のストレートの減速とともに、変化球のレベルの高さを表している。

 未来の課題とそれを補うピッチングスタイルの多彩さがこのイニング後半にしっかり現われている。

 試合後の囲み取材でフォークボールのキレのよさを問うと、「追い込んだとき、(相手が)ストレートを待っているのがわかったのでフォークボールを投げた」と言った。さらに驚かされたのは、フォークボールを試合で投げたのはこの盛岡三戦が初めてと聞かされたことだった。

 さらに右手の指(どの箇所か不明)がつっていたため、“気持ち”で投げたとも告白。佐々木の逆境をプラスに転じようとする気持ちの強さが伝わってきた取材で嬉しくなった。

リスクはピッチングフォームにある。

 この佐々木を指導するのは國保陽平監督だ。

 試合後の囲み取材で「142球投げたのは大丈夫ですか」と聞くと、「球数はリスクではない」とはっきり言われてびっくりした。「リスクは球数よりピッチングフォームにある」と言うのである。

 実は私も國保監督と同じ意見だ。数年前、古田敦也さん(元ヤクルト監督)がMCのテレビ番組で「球数よりピッチングフォームが悪いほうが肩・ヒジの故障につながる」と話し、それを観ていた林卓史・前慶応大学助監督は同意見と断った上で、「ピッチャーは1球投げただけで肩を壊す危険性がある」と記憶に残る言葉をかけてくれた。

 それでも私はアメリカ球界が神経をとがらす球数制限を無視することはできない。

「類まれな逸材、佐々木朗希の将来のためにも球数には気を遣ってもらいたいと、これはお願いである」とは、私のホームページのトップ画面に貼りつけた文章である。

【次ページ】 チーム作りに見える國保監督の意志。

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