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選手にとっても「人生で一度」のW杯。
ラグビー代表、当落線上の男たち。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2019/06/02 08:00
東海大仰星での全国制覇、そして早稲田大を経て神戸製鋼入り。山中亮平は今、W杯を本当にもとめている。
スーパーラグビーとも違う代表の重さ。
日本代表は昨年10月から11月にかけて世界選抜、オールブラックスことニュージーランド、イングランド、ロシアとテストマッチを戦った。
国内での世界選抜戦とニュージーランド戦は流が、敵地でのイングランド戦では田中がスクラムハーフとして先発し、ロシア戦では茂野が背番号9のジャージを託された。'16年6月以来の代表キャップを刻んだ。
「スーパーラグビーで戦うのもすごいことですが、代表のジャージはまた一段と違うというか……日本を代表して戦うわけですから、何が何でも勝たなければいけないし、しっかりと準備をして、グラウンドでベストなパフォーマンスを発揮しないといけない」
自国開催のW杯は、ラグビーがこの国に根付くための好機と成り得る。そのためにも、史上初のプール戦突破、すなわち準々決勝進出が求められる。ランキング上位国のアイルランドかスコットランドのいずれかを下すことで、歴史の扉は開く。
「どちらかに勝つというよりも、両方に勝つ気持ちです。2015年を経て日本代表に対する世界の見方が変わっていると思いますし、選手も自分たちもできるという自信を持てるようになっている。僕はつねに、どんな試合でも勝ちたいです」
落選して「ホッとした」男の逆襲。
山中亮平は「ラストチャンス」という表現を使う。'18-'19シーズンのトップリーグを制した神戸製鋼でプレーする30歳は、「今回のW杯で代表に選ばれるために、それぐらいの気持ちでやっています」と言葉をつないだ。
茂野と同じように彼も、今シーズンはサンウルブズで経験を積んでいる。
2大会連続でW杯出場を逃してきた。早稲田大学から神戸製鋼へ入団した直後の'11年大会は、育毛剤が薬物検査に引っ掛かり、選手資格停止の処分を受けたことで出場の道を絶たれた。'15年大会はギリギリまで競争に加わったものの、バックアップメンバーへまわることになった。
「'15年大会のときは、何かが足りなかったと思うんです。自分は、その、何て言ったらいいんですかね……W杯のメンバーに入れなくても、そんなに悔しいと思わなかったんですね。何かちょっとこう、ホッとしたような部分もあったんです。ホッとしたという言い方が合っているのかどうか分からないですけど、ちょっと、そんなような気持があったのは事実でした」