ラグビーPRESSBACK NUMBER
選手にとっても「人生で一度」のW杯。
ラグビー代表、当落線上の男たち。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2019/06/02 08:00
東海大仰星での全国制覇、そして早稲田大を経て神戸製鋼入り。山中亮平は今、W杯を本当にもとめている。
初めて感じた本当の悔しさ。
2019年のいまは違う。昨年11月のイングランド遠征が、山中の闘志にスイッチを入れた。
「去年の11月3日のオールブラックス戦で先発で使ってもらって、初めて15番で出た。自分としては精いっぱいやったし、ディフェンスのところでしっかり見せられたと思ったんですけど、そのあとのイングランド戦とロシア戦はメンバー外だった。それがすごく悔しくて。
それまではリザーブでもメンバー外でもわりと冷静に受け止められるというか、『また頑張ろう』という気持ちが強かったんですが、去年の11月のツアーではホントに悔しくて。なぜなのかは分かりませんが、すごく変わりました」
キャリアのほとんどをスタンドオフやセンターで過ごしてきた山中だが、昨年8月から15番を着けるフルバックが定位置になった。「まだまだ初心者なんですが」と申し訳なさそうな笑みをこぼしつつも、「どのポジションでもスタッフが求めるものを精いっぱいやるだけだと思っています。そのうえで言えば、いまはもうフルバックが一番やりやすいです」と迷いなく話す。
日本代表のフルバックには、'15年大会にも出場した松島幸太朗がいる。山中が出場しなかったイングランド戦とロシア戦では、センターでもプレーできるウィリアム・トゥポウがフルバックに指名された。
東海大学在籍時の'16年から日本代表入りしている23歳の野口竜司も、フルバックの候補者にあがってくる。
「今回入らなかったらホッとはしない」
ライバルは多いが、山中の瞳は眩しく揺らめく。自らへの期待や希望、決意や覚悟といったものが胸中で静かに、それでいて熱く燃え盛っている。
「4年後は35歳なので、今回のW杯しか考えられない。今回入らなかったらホッとはしないし、たぶんメチャクチャ悔しいし、泣くぐらいの気持ちになると思うんです。だから、4年前とはモチベーションが違うと思うんです。4年前はそこまでの意欲がなかった。あったとは思いますけど、いまの自分から見たら全然足りていない。いまの僕は、モチベーションも意欲もある」
史上初のベスト8入りをターゲットとする日本代表に、茂野は、山中は名を連ねることができるのか。輝かしいステージに立つための競争はいつだって苛烈にして残酷で、予想がつかないものである。