スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
女子サッカーに熱狂するスペイン。
観客は6万人超、視聴率は20%も。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2019/05/29 11:30
史上最高の観客数6万人超えとなるなど、国民の間でも注目度が急激に高まるスペイン女子サッカー。代表の強化も着々と進んでいるようだ。
低レベルの運営、パワハラ……の改善。
女子サッカーの盛り上がりについて、元スペイン代表MFベロ・ボケテはスポーツ紙『アス』に寄稿したコラムの中で「3年前では想像できなかったこと」と綴っている。
ベロの言う通り、この数年でスペインの女子フットボール界を取り巻く環境は急速に変化してきた。
初出場した4年前のワールドカップは1分2敗の最下位でグループリーグ敗退。大会直後には出場した全23選手が、27年間も同代表を牛耳ってきたイグナシオ・ケレダ監督の解任を要求するとともに、アマチュアレベルのチーム運営やパワハラの横行を公に訴える事件まで起きた。
そのような騒動を受けて重い腰を上げざるを得なくなったスペインフットボール協会(RFEF)は、U-17、U-19女子代表監督を歴任してきた当時34歳のホルヘ・ビルダを新監督に据え、プレー環境の改善を約束することに。
並行して女子トップリーグは2016年から冠スポンサーを務める電力公共企業『イベルドローラ』社、大手メディアグループ『メディアプロ』社らの投資を受けて資金力を増し、『GOL』が毎節3試合を放送することで社会的認知度を高めていった。
こうした周囲の後押しがあったからこそ、バルサのようなビッグクラブが女子チームの本格的な強化に乗り出すようになったと言える。
欧州は強化に着手、南米でもプロ化の動き。
女子フットボール界を後押しする近年の傾向はスペイン以外にも見て取れる。
女子CLのスポンサーには大手クレジットカード『VISA』社が参入。強化に乗り出したイングランドでは大手銀行『バークレイズ』がトップリーグのスポンサーとなり、『BBC』の女子フットボール専門番組は140万人の視聴者数を抱えるようになった。
他にもイタリア、ポルトガルといった女子フットボール“後進国”もスペインに続けと強化に乗り出し、南米でもアルゼンチンなどがトップリーグのプロ化を進めている。