プレミアリーグの時間BACK NUMBER
CLとELはアメコミのヒーロー的決戦?
プレミア4クラブをたとえると……。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2019/05/23 17:30
史上初のCL決勝進出を果たしたトッテナム。ケインの決定力はクラブに歓喜をもたらすか。
スパイダーマン的なアーセナル。
アーセナルはEL初優勝のチャンスだ。CLに比べれば強豪との対戦が少なく、新監督のウナイ・エメリはセビージャ時代に3連覇を経験している。チームも不安定だった今季のプレミアとは異なり、ELでは安定した強さを披露している。
欧州戦では「スパイダーセンス」が働く「スパイダーマン」のように戦う。
優勝候補と目されたナポリとの準々決勝にも合計3-0のスコアで無難に勝利を収めている。
続くバレンシアとの準決勝第2レグ(4-2)では、意外な芯の強さも見せた。
ホームで先勝(3-1)していたが、威圧感のあるバレンシアの本拠地で、なおかつエメリにとっては敵対視を受ける古巣との対戦。その状況で前半早々に先制されたが、選手たちは動揺することなく戦い抜いた。
前体制から指摘されてきた精神面の脆さはなく、主砲ピエール・エメリク・オーバメヤンのハットトリックで勝利を動かぬものにしてみせた。同様の姿をプレミア終盤戦でも見せていれば、チェルシーではなくアーセナルがトップ4復帰を果たしていた。そう思わせる、EL決勝進出だった。
チェルシーはアントマンになる!
国内で「スパイダーマン」に跳び越されずに済んだチェルシーは「アントマン」とでも言うべきか?
1cm程度の蟻サイズから身長30mの巨人まで。自由にサイズを変えるスーパーヒーローがアントマンだが、マウリツィオ・サッリ体制1年目のチームはエース、エデン・アザールの出来によって強さが極端に変わるシーズンだった。
“サッリ・ボール”と呼ばれた新監督が信条とするスタイル(ポゼッションを基盤とする攻撃的サッカー)が序盤戦では感心されたが、終盤戦では限界とまで言われた。
プレミアリーグで自己ベストとなる16得点15アシストを記録したアザールがいなければ、CL出場権獲得は叶わなかっただろう。EL優勝での出場権獲得のみであれば、そのプレッシャーに押しつぶされていたかもしれない。
決勝進出を懸けたフランクフルトとの第2レグ(1-1)でも、勝負を分けたのはアザールによる先制点アシストと、延長戦を経てのPK戦における一蹴りだった。