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U-20W杯に滑り込んだアタッカー。
G大阪・中村の「敬斗ゾーン」を見よ。 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byTakahito Ando

posted2019/05/16 18:00

U-20W杯に滑り込んだアタッカー。G大阪・中村の「敬斗ゾーン」を見よ。<Number Web> photograph by Takahito Ando

U-20W杯開幕前、国内最後の練習試合でフル出場した中村敬斗。見事なボレーを決め、アピールに成功した。

U-17W杯で活躍、高3でプロに。

 中村にとって前述したように、U-20日本代表メンバー入りは今年に入って初のことだった。

 今回の代表メンバーの多くも出場していた2017年U-17W杯でチームの主軸としてプレーしていた中村は、初戦のホンジュラス戦ではいきなりハットトリックと爆発し、3戦で4得点とグループリーグ突破に大きく貢献。決勝トーナメント初戦となったイングランド戦でも、ゴールこそ奪えなかったが、守勢に回りながらも時折見せるドリブル突破でチャンスを作り出した。

 そして昨年、高校卒業を待たずして、生まれ育った千葉を離れ、高3でG大阪に加入。レヴィー・クルピの下ですぐに頭角を現し、開幕戦で早速J1デビューを飾ると、ルヴァンカップ第2節の浦和レッズ戦でプロ初ゴールをマークした。

 順調なステップアップを見せていた中村だったが、昨年途中でクルピ監督が解任され、新たに宮本恒靖監督が就任すると、状況が一変した。

「レヴィーさんには得点感覚が優れていることを評価されていたのだと思うけど、それ以外を見たらおそらくプロの平均点以下で、プロで通用するレベルではなかった。走れないし、戦えないし、球際に行けないし、オフの動きも足りない。それを宮本監督に指摘された」

 出番は一気になくなり、ベンチ外を味わう時期が続いた。倉田秋の出場停止で巡ってきた昨年のJ1第33節のVファーレン長崎戦ではスタメンに抜擢され、J1初ゴールとフル出場を記録したが、「3カ月半くらいはほぼJ1から姿を消した」と本人が表現するように、表舞台から長く離れた。それも影響し、年代別の日本代表からも彼の名前は消えていた。

カップ戦で見せ付けた「敬斗ゾーン」。

 迎えた2019年。プロ2年目のスタートはJ1の表舞台ではなく、U-23チームとしてのJ3だった。だが、そこでコツコツと自分のプレーを表現し、カップ戦でトップチームのチャンスを掴んだ。

 4月24日のルヴァンカップ・グループリーグ第4節のジュビロ磐田戦。3-1で迎えた後半アディショナルタイム2分、ハーフラインを超えた位置でDF黒川圭介からパスを受けると、ファーストタッチを大きく前に出して一気に加速。ペナルティーエリア左内に侵入すると、コースを消しにきた相手DFを内側への切り返しでずらし、かわし切らないまま右足一閃。強烈なライナーは右ポストに当たってゴールに吸い込まれた。

 高校時代から何度も見せていた「これぞ、中村敬斗」という高速カットイン。左45度の「敬斗ゾーン」から放たれた強烈かつ正確なシュートだった。

 すると、同5節の清水エスパルス戦でも結果を残す。2-1で迎えた67分、DFラインからのロングフィードをFWファン・ウィジョがワンタッチで左サイドを駆け上がった中村に落とすと、ファーストタッチでギアをトップスピードに上げて前に仕掛け、相手DFを完全に振り切ってカットイン。最後は「敬斗ゾーン」から、冷静にGKの動きを見て、頭上をドライブ気味に射抜くコントロールショットを突き刺した。

【次ページ】 課題に向き合い、逃げなかった中村。

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