“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-20W杯に滑り込んだアタッカー。
G大阪・中村の「敬斗ゾーン」を見よ。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/05/16 18:00
U-20W杯開幕前、国内最後の練習試合でフル出場した中村敬斗。見事なボレーを決め、アピールに成功した。
課題に向き合い、逃げなかった中村。
ルヴァンカップで2戦連発。周りからは復活弾のように見えた。だが、中村にとって、これまでの不調は決して“低迷”ではなかった。
宮本監督によって、課題を突きつけられたからこそ、彼はそこから逃げたり、焦って全てを解消しようとしたのではなく、1つずつ解決していく道を選んでいたのだった。
「日頃から監督などに言われたことを徹底して取り組んで、競り合いも意識的にやるようになりました。一つひとつこなし、昨年の長崎戦でスタメンに抜擢され、そこで少しでも変わった姿を見せることができた。そう思って今季に入ったのですが、やっぱり変わりきれていなかったというか、まだまだ足りないことを知った。
でも、そこで(G大阪)U-23の森下仁志監督に本当に鍛えなおしてもらった。サッカーに対する姿勢もそう。守備を意識して取り組んでいくと、自分の1番大事な武器というのを忘れてしまうんですよね。確かに去年の終わりは試合で守備をやるようになったし、それはいいと思うのですが、『ただのチームの一員』になってしまっていた。そこで『自分の武器を発揮しろ』と森下さんに言われました」
「感覚が戻ってきている証拠」
「ルヴァンカップの2ゴールを見てもらってもわかると思いますが、去年のJ1初ゴールのようにこぼれ球を詰めて押し込んでの得点も大事ですが、左サイドから切れ込んで決める『自分の形』をプロの舞台で出すことができた。今日の試合(流通経済大戦)ではなかったですが、感覚が戻ってきている証拠だと思います」
課題と向き合い、周囲の意見を聞きながら、着実に平均値を上げる。そしてそれに忙殺されすぎて、本来の自分の武器がぼやけてしまいそうな時に、森下監督がその感覚を呼び覚ましてくれた。
1日を無駄にせず、結果に一喜一憂せずに歩んできたからこそ、ルヴァンカップ「敬斗ゾーン」からの2ゴールにつながり、今、U-20W杯に挑む立場を手にすることができた。