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リーグ・アンでもマルセイユは別格!
OMの元名物会長タピを巡る壮絶秘話。
text by
アレクサンドレ・フィーベAlexandre Fievee
photograph byMichel Deschamps/L'Equipe
posted2019/05/19 11:00
ベルナール・タピ(写真中央のスーツ姿)が、会長就任後3年目でリーグ優勝を果たした時の写真。同年フランス杯も獲得し、2冠に輝いた。
不正の噂は以前からあったが……。
リーグ戦の第36節に向けて、チームは18位のバレンシエンヌと戦うために敵地に移動した。1993年5月20日に予定された試合前の数日間に不正工作は行われた。それはOMの運命を分けた出来事だった。
試合の終盤、選手たちの会話はそのことでもちきりだった。ジャンジャック・エデリー(当時OM所属。ベルネスとともに不正を仲介したとされる)が説明する。
「選手たちには事前に話していたから、誰もが状況を理解していた。でも彼らの反応はいたって静かだった。驚きもまったくなかったように見受けられた。
噂は以前から流れていた。またシーズンを通して、不正の噂は伝わってきていた。僕らは幾度となく、勝ったのは自分たちの力なのか、それとも目の前の対戦相手が買収を受け入れたからなのかと自問していた。
たとえばベロドロームでのモナコ戦は、ストッキングを下ろしている選手が買収に応じたと言われた。それが噂にすぎなかったのか、それとも事実だったのかは僕にはわからない。でもたしかにそうしたことが僕らの耳に伝わってきた。他の試合では、そうした情報がなくとも僕らは疑念を抱いていた。
選手たちは不正を嫌悪していた。そんなことが起こっているかもしれないという状況に、僕らはサッカー選手としていら立ちと不名誉とを感じていた。不正などしなくとも、自分たちの力で結果を得られるという自信が僕らにはあったからね」
たしかに不正工作などしなくとも、実力でOMはリーグ5連覇を達成できただろう。だが、それでもクラブを買収に走らせるほどの熱さが、当時のマルセイユにはあったのだった。