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リーグ・アンでもマルセイユは別格!
OMの元名物会長タピを巡る壮絶秘話。
text by
アレクサンドレ・フィーベAlexandre Fievee
photograph byMichel Deschamps/L'Equipe
posted2019/05/19 11:00
ベルナール・タピ(写真中央のスーツ姿)が、会長就任後3年目でリーグ優勝を果たした時の写真。同年フランス杯も獲得し、2冠に輝いた。
マラドーナ・フィーバーの唐突な終焉。
マラドーナとの話し合いが進んでいることは、クラブでもほとんど誰も知らされていなかった。
「私たちはオセールとフランスカップ準決勝第2戦を戦うためにトロワのホテルにいた」とガエタン・ウアール(88~91年OM所属)は当時を振り返る。
「朝食を食べていると、レキップ紙の一面にマラドーナがマルセイユに到着したと報じられていた。ほとんど公式発表に近かったからまさに青天の霹靂だった。『マラドーナがマルセイユへ』と書かれていて、そこには一片の疑いもなかった。その記事を読んで、誰もがもの凄く興奮した。気力が充満した僕らにオセールが勝てるはずなどなかった!」
ところが6月3日の夜、マラドーナはナポリを去るという噂のすべてを否定した。ジャンピエール・ベルネスの奔走にもかかわらず交渉は失敗に終わったのだった。
「マラドーナの代理人に会いにアルゼンチンまで行った。マラドーナは雑音のない静かなクラブを望んでいた。彼には休息が必要だった。移籍が表沙汰になってからのマルセイユの狂騒を目の当たりにして、彼は来る気をなくしたんだ」
欲しい選手の前で、いきなり不満を告白。
もうひとつの驚きは、バジール・ボリ(後に浦和レッズに移籍)がオセールからマルセイユに移籍したことだった。
「フランス最高のディフェンダーだからどうしても僕(ボリ)を獲って欲しいって、ジャンピエール・パパンがタピを説得したんだ」とボリは当時の事情を語る。
「実を言うとPSGと契約寸前までいっていた。フランシス・ボレリ(当時PSG会長)との交渉はすべての面で合意に達した。ところがその翌日、タピが僕に会いたいと言ってきた。会合の席で彼は僕にこう言った。
『君はフランス最高のディフェンダーだと言われているけど私はそうは思わない。フランス代表での君のプレーを見たが、パスは決していいとはいえなかった』と。
僕はこう答えた。
『あなたはそんなことを言うために僕と会いたかったのですか?』
とね」