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リーグ・アンでもマルセイユは別格!
OMの元名物会長タピを巡る壮絶秘話。 

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アレクサンドレ・フィーベ

アレクサンドレ・フィーベAlexandre Fievee

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photograph byMichel Deschamps/L'Equipe

posted2019/05/19 11:00

リーグ・アンでもマルセイユは別格!OMの元名物会長タピを巡る壮絶秘話。<Number Web> photograph by Michel Deschamps/L'Equipe

ベルナール・タピ(写真中央のスーツ姿)が、会長就任後3年目でリーグ優勝を果たした時の写真。同年フランス杯も獲得し、2冠に輝いた。

PSGに決まっていた選手を強奪!?

 続いてタピは、こう聞いてきたという。

「『PSGは君(ボリ)にどんなオファーをしたんだ?』

『それは言えません。いずれにせよすべてがもう決まりましたから。あとは子供の学校とか家とか……』

 僕が説明している最中に、彼は僕に具体的なオファーを提案してきた。家に帰った僕は、妻に行先はパリではなくマルセイユだと告げることになった。

 当時の僕は、マルセイユのファンにあまり好かれてはいなかった。だから僕がマリニャン(マルセイユ郊外の空港)に到着したとき、クラブのスタッフは誰にも気づかれないように僕を車に隠したんだ。それからジャンピエール・ベルネスと一緒にプラド(ベロドローム近くの繁華街)まで行って契約書にサインをした」

カイザーと警察。

 フランツ・ベッケンバウアー('90年9月~'91年1月の間、監督を務めた)は、OMというクラブに適応しようとしていた。だが、そのプロセスは、彼にとって驚きの連続だった。ベルナール・パルド(元フランス代表)が当時の思い出を語る。

「ある日、僕らはリュミニーで練習しなければならなかった。ところが前日に大雨が降ったから、グラウンドキーパーは僕らをピッチに入れたくなかった(それでも結局、雨中で練習したのだが)。

 練習後、誰もずぶ濡れになった練習着を洗濯しようとしないから、ベッケンバウアーが自ら洗濯機にかけて乾燥機で乾かした。

 それから彼は、移動の際に僕らにスーツ着用を求めるようになったんだ」

 パルドが別のエピソードを披露する。ツーロンの不正経理捜査で、練習の最中に警官が訪れたのは11月末のことだった。

「3人の私服警官がやって来て、そのうちのひとりが僕に声をかけて一緒に来るように求めた。僕が近づいていくと彼らはこう言った。

『騒ぎにしたくありません。カゾニとオルメタ、あなたに出頭してほしいのです』

『え、今ですか? まだ練習中だけど』

 彼らはこう答えた。

『ええ、今すぐ来てください。これからあなたを勾留します』

 遠くからその様子を窺っていたフランツは、いったい何があったのか僕に尋ねた。僕は警察が待っているからすぐに行かねばならないと彼に説明した。彼は茫然として英語でこう叫んだ。

『警察っていったい何なんだ!』

 僕らが警官たちと去っていく様子を見た彼は打ちひしがれていた。ショックで顔色を失い、何てところに来てしまったんだという後悔の気持ちがありありとうかがえた」

【次ページ】 不正の噂は以前からあったが……。

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