マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
がんばれ、キャッチャー及川恵介。
佐々木朗希の夏は君にかかっている。
posted2019/05/14 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
AFLO
大船渡高・佐々木朗希投手の周辺が“過熱”しているようだ。
岩手県の春季大会の地区予選の初戦から球場にファンが詰めかけて、その様子がスポーツ新聞の1面で伝えられる。
この春、大船渡高が地方予選を戦った球場は、以前私も行ったことがあるが、そりゃあ不便な場所にある。
最寄り駅までの鉄道の便もよくないが、その駅から球場までの道のりがまたひと苦労だ。そもそも、人が鉄道と歩きでやって来るような想定で作られていない。
近隣の人が車でやって来るだろう……ぐらいの想定だろうから、駐車場だって広くない。1000も2000も人が来るとは夢にも想わないで作られた「地元の人のための球場」であろう。
どのみちいずれは人に囲まれるのだ。
インターネットのおかげで誰もが情報の発信源になれるようになり、物見高い方たちがどこにでも大勢訪れるようになった。
選手たちの家族が見に来ればそれだけでいっぱいになりそうなささやかな観客席も、あちらこちらからやって来た“ファン”で早朝から埋め尽くされる。
佐々木投手本人にとっては、悪いことじゃないと思う。むしろ良いことじゃないかと思う。
本人は正直なところ、「うるさいなぁ……」とうっとうしがっているのかもしれないが、この先、野球でご飯を食べていくのなら、どのみち人に囲まれ、人に騒がれ、時には人にかき乱されながら投げていかなきゃならないのだから、最初はちょっと嫌かもしれないが、早いとこ慣れておいたほうがよい。
“視線”など気にすることはない。なあに、たいした視線じゃない。凝視する視線など、いくつもない。みんなが待っているのは、また新しい数字の出るその一瞬だけだ。
そんな中、佐々木投手本人は気分よく腕を振ることに集中していればよいのだが、いつも「たいへんだろうなぁ……」と心が向いてしまうのが、彼とバッテリーを組む「キャッチャー」のことだ。