マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
がんばれ、キャッチャー及川恵介。
佐々木朗希の夏は君にかかっている。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byAFLO
posted2019/05/14 07:00
佐々木朗希が剛速球を投げられるのは、それを受け止める捕手・及川恵介がいてこそなのだ。
及川恵介くんに聞いてみたいこと。
及川恵介くん、3年生。
それぐらいのことしか知らないのだが、妙に気になってしょうがない。
佐々木朗希投手とは一度ゆっくり話してみたいし、彼の「160なんキロ」で我がミットと左手を粉砕されて、20年続いた「流しのブルペンキャッチャー」の看板を下ろすことになってもいいなぁ……などとボンヤリ考えてもいるのだが、それ以上にキャッチャー・及川恵介に、「佐々木朗希の女房役」としてのあれこれを訊いてみたくて仕方ない。
佐々木朗希のストレートとは、ひと口に言って、どんなボールなのか?
毎日のようにあの剛球を受けていて、身体にダメージはないのか?
私も学生時代に、当時スピードガンがあったら、間違いなく150キロ台を連発していたはずの“剛腕”のボールを毎日のように受けさせられて、腐ったタラコのようになった紫色の人差し指と親指をバケツの水に浸して冷やすのが毎晩の日課だったが、同じような“ルーティン”が君にもあるのか?
毎日痛い思いをしてボールを受けてきたのは君なのに、U18の合宿で「MAX163」をヨソのキャッチャーに持ってかれて、悔しくはなかったのか?
正直、朗希を選ぶならセットでオレも選ばないと、ここまで彼を育てたオレに失礼ではないのか……と思ったりしているんじゃないのか?
正直、「オレの朗希」がヨソのキャッチャーたちと組んで、ジェラシーを感じることはないのか?
世間は“163キロ”の話ばかりしているが、受けている君が感じている「佐々木朗希のベストボール」とはなんなのか?
そのベストボールを駆使して、君はどんな配球でバッターを攻めたいのか?
あんなボールを受け続けているからこそ。
私の大学同期で、あの「江川卓」とバッテリーを組んでいたキャッチャーは、左手の人差し指だか中指だかが曲がっていたが、君の「左手」はどんな形をしているのか?
ほんとは、あんなすごいボール、もう勘弁してください! と泣きを入れたいんじゃないのか?
それでも、なんとか夏までもたせるために、いったいどんなケアをしているのか?
そんな君のサインに、佐々木投手が首を振ることがあるのか?
ピッチャーにはキャッチャーをいたわるなんて絶対しない“人種”も多いが、彼は君の体調を気遣ったりしてくれることはあるのか?
たまには、「いつもオレのボールでたいへんだな……」とか言って、アイスの1本もおごってくれたりはしないのか?
練習の帰り道、ふたりはどんな話をするのか?
たまには、景色のよい高台などに登って、来年の今ごろは……とか、10年後のオレは……とか、そんなことを語り合ったりもするのか?