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前人未到の記録に挑む田中将大。
“新人”菊池雄星に贈ったメッセージ。 

text by

笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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photograph byKyodo News

posted2019/05/12 11:30

前人未到の記録に挑む田中将大。“新人”菊池雄星に贈ったメッセージ。<Number Web> photograph by Kyodo News

試合前に握手を交わすヤンキースの田中将大(右)とマリナーズの菊池雄星(左)。

ショートスタートへの葛藤。

 田中と菊池。日本時代は楽天と西武に在籍したふたりだが、当時は面識がほとんどなかったという。そのふたりが米国で初対面を果たしたのは6日の試合前。菊池のビデオを見たという田中がルーキー投手を気遣うかのようにこんな言葉を残した。

「あくまでも個人的な感想。1年目は絶対疲れが溜まってくる。初めてのことばかりでストレスもかかるでしょう。その中で月に1回、1イニングでマウンドを降りて次の準備をする。広い目で見たときに助けになるんじゃないかなと思いますよね。イニング数も自然と抑えられるし、体にも休息になる。いいアイディアなのかなと思いました」

 自身の1年目の苦労を思い起こしたのだろう。それゆえの気遣い。心優しき先輩の言葉は菊池の葛藤とも重なった。

 チーム方針で入団当初から決まっていた月1回のショートスタート。「自分を気遣ってくれるありがたい配慮」と受け入れる反面「本来ならば……」と、その先の言葉を飲み込んだ。菊池が危惧するもの……。それは他の投手陣へのしわ寄せだったのではないだろうか。

 事実、初のショートスタートとなった4月26日のレンジャーズ戦では延長戦に入ってしまったこともあり8投手を起用した。翌日は先発投手が炎上し、ブルペンも枯渇。

 結果、野手のディラン・ムーアがマウンドに上がる事態となった。“自分が普通に投げていれば”と、菊池が感じるのは当然のこと。それでも田中は言った。

「それ(ショートスタート)は毎年するわけじゃないでしょうから。1年目だからということ」

30歳田中将大の信条。

 受けた恩義は今季の投球と来季以降につなげればいい。今、向き合うべきことに全力を尽くすことの方が大事。田中はそう言っているのだと感じた。

 田中には信条がある。

「自分に立ちはだかっている課題に対し、向き合わないとクリアすることはできない、乗り越えることはできない。その事実と向き合いながら進んでいく、向上していく」

 その結果が日本人投手で黒田博樹氏と並ぶ5年連続二桁勝利。今季は前人未到の6年連続への挑戦となる。

 マーくんと呼ばれる男もすでに30歳。6月にはふたりめの子供も生まれる。経験を糧に変える田中が贈った菊池へのメッセージに心が温まった。

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