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北朝鮮・平壌マラソン参戦記、前編。
参加費は「米ドル現金払い」の闇。
text by
サハラタカシTakashi Sahara
photograph byTakashi Sahara
posted2019/05/13 08:00
平壌マラソンでサブスリーに挑戦したサハラタカシ氏。平壌での日々は刺激的だった模様だ。
台湾特集の雑誌が見つかり別室へ。
無事に平壌に到着すると機内の乗客からは拍手が沸き起こる。確かに一安心だ。しかし今から1つ目の山場、入国審査を迎える。
一説によれば荷物は全て開けられ、少しでも申告に虚偽があれば「別室」行きという話を聞いていた。機内ではしゃいでいた西欧人の表情も少し緊張の面持ち。これまで様々な国の入国審査を経験したが、持ち込む電子機器の名前、数そして持ち込む本の冊数まで書かされたのは初めてだ。
いよいよ自分の番になり、パスポートと携帯電話を預けると、「何、あんた日本人? じゃあこっちこっち」と流暢な日本語で手招きをされる。距離感の近さが、逆に怖い。
2つ持ち込んだカバンのうち、1つを開けるように指示されて中を開けると、申告以上の本があることが発覚した。
しかもそれが、羽田空港で何の気なしに買った台湾特集の雑誌だったため、行き先が違うのではないか、誰かに渡すのかと余計に怪しまれ、別室行きが確定。丹念に内容を吟味されたあと、メモを取られて無事釈放。どこの国も入国審査の人は怖そうだが、北朝鮮の係官は本当に怖かった。みんな、金ピカの時計をしていたのが特に印象的だった。
真の職務は不明なガイドさん。
入国後はガイドさんと合流。我々のグループは、女性3名だった。
彼女達はKITC(Korea International Travel Company)と呼ばれる国家観光総局傘下の旅行会社に所属しており、我々のような外国人のガイドが主な仕事だそうだ。なお外国人はこのKITCから招待を受けないと入国できないシステムになっている。
なお、一度北朝鮮に入国するとアメリカや韓国に行けなくなるという噂があるが、実際はそんなことはないらしい。北朝鮮からのビザはパスポートには印刷されず、別にTourist Cardが発行され、出国の際に返却、というシステムになっているらしい。
ただ電車で入出国の際は、丹東という都市のスタンプが押される為、見る人が見れば北朝鮮への入国がバレてしまうとか。
ガイドを務める彼女達の「真の職務」は不明だが、3泊4日の行動を通じて、我々を監視するというよりも、いかに安全にツアーを遂行するか、そして北朝鮮のイメージを上げて帰れるかに重きを置いていた気がする(もちろん実際は定かではない)。