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北朝鮮・平壌マラソン参戦記、前編。
参加費は「米ドル現金払い」の闇。
text by
サハラタカシTakashi Sahara
photograph byTakashi Sahara
posted2019/05/13 08:00
平壌マラソンでサブスリーに挑戦したサハラタカシ氏。平壌での日々は刺激的だった模様だ。
生きて北京まで帰るのが大事。
ツアーの参加者からいくつか質問が出た。
Q.GPS持込禁止と書いてあるが、Garminなどランニング用のデバイスは大丈夫ですか?
A.「デジタルウォッチです」、とだけ言いましょう。
Q.レース中トイレにいけますか? どこにありますか?
A.基本的に5kmおきに給水施設があってその付近にあります。決して急いでショートカット等しないで下さい。不穏な動きをすると、間違いなくゼッケン番号をメモされて、モニターされます(なお説明係の人は「well behave, best behave」を連呼)。
Q.この国では追い抜く際は右からですか? 左からですか?
A.不必要なくらい道幅が広いので、気にしないで下さい(一同爆笑)。
Q.レースの開始時間は何時ですか?
A.みんながちゃんと揃ったらスタートです。
今回の参加者はヨーロッパからの人々が大多数で、東南アジアが少数、残念ながら日本人はいなかった。そこまでブリーフィングでは予想外にピリピリした緊張感はなかったが、とにかくルールさえ守ってくれれば無事に帰ってこられると連呼していた。
ともかく生きて北京まで帰って来るのが平壌マラソン。翌日からの長旅に備え、この日は早めに就寝する。
機内サービスで配られた新聞が……。
<ツアー1日目(4/5金曜日)>
ワームビア事件(米の大学生が北朝鮮に拘束され、米国に帰国直後に死亡した事件)の恐怖から、飛行機で入国、電車で出国を選択した。
北京-平壌間の航空会社は北朝鮮のナショナルフラッグ・高麗航空。機体はエアバスでもボーイングでもなく、マニア垂涎の旧ソ連のツポレフTu-204。
実は高麗航空は「1つ星航空」と呼ばれており、欧州からは政治上の理由でなく、安全性の理由でこのTu-204以外の全機種で乗り入れを制限されているらしい。
パイロットはもちろん軍人上がりで、キャビンアテンダントさんにいたっては離陸時も着席せず、両サイドの背もたれを掴み立ったまま耐えるというスペクタクルな航空会社だという噂を耳にしていた。
しかし想像とは裏腹に、CAさんは絶世の美女ぞろい。離陸前に1時間以上も謎の待機を強いられたが、それ以外は普通の航空会社と同様の運行とサービスだった。しばらくすると、北京でのブリーフィングで説明された金正恩が表紙の新聞が機内サービスで配られた。
みんな恐る恐る写真を撮り、折り目への恐怖から返す人もいた中で、自分は持って帰ることを決意。折り目がつかないように丁寧に持っていると、横の中国人が「写真撮りたいから貸してくれ」と言うので渡す。
すると、折って返されるハプニングが。いきなり絶体絶命のピンチか! と慌てたが、幸いにも顔に折り目はついていなかったので事なきを得た。あれだけ説明を受けた後なので心臓に悪い。
お世辞にも美味しいとは言えないハンバーガー、高麗航空が自社で作っているとの噂のコーラもどきを飲んでいると、まもなく着陸とのアナウンスが流れた。