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北朝鮮・平壌マラソン参戦記、前編。
参加費は「米ドル現金払い」の闇。
text by
サハラタカシTakashi Sahara
photograph byTakashi Sahara
posted2019/05/13 08:00
平壌マラソンでサブスリーに挑戦したサハラタカシ氏。平壌での日々は刺激的だった模様だ。
エントリー通貨はユーロ建ての闇。
実際に準備をはじめると、平壌マラソンは走る前から突っ込みどころ満載のレースだった。
まず、エントリーの通貨はユーロ建てなのだ。「なぜUSドルじゃないんだろう?」と思ってたら、アメリカによる送金規制でUSドル決済が不可のようだ。またエントリー費とは別に「マラソン代」(なんだそれ!)を、現金で150USドル持って行かないといけないようで、しかもピン札オンリーの指定。……これはいろいろと考えだすと、なんとも闇が深そうだ。
またツアーの窓口である中国の会社から送られて来た資料には、全ページに「DO NOT TAKE THIS DOCUMENT INTO KOREA」と書かれている。まるで007の気分だ。そもそも説明書きに「DO NOT」から始まる項目が多過ぎる。
一方、現地の人へのお土産は「highly recommended」と書かれている。男性にはタバコ、女性へはチョコレート、ハンドクリームがオススメです、ともあった。よく映画の刑務所などのシーンで出てくるような、こっそりタバコを握らせる……あんな体験ができるのだろうか? 浮世の沙汰も金次第と言うので、生存確率の上がりそうなことは全てやっておこう。そう思い、タバコはカートンで購入した。
マラソン以外にもツアーが組まれているので、我々は3泊4日のプランでエントリーを行い、一路北京へ向かった。
金日成、金正日像は全身を撮る。
<ツアー0日目(4/4木曜日)>
北京に到着。Koryo Toursという平壌マラソン唯一のスポンサー企業のオフィスにて、北朝鮮VISA取得+ブリーフィングがあった。
主な内容は以下のようなものだった。
・金日成、金正日の像は絶対に全身撮らないといけません。顔だけNG。同じポーズNG。見切れNG。セルフィーNG。マナーの悪い人はロングステイを強いられるので、超気を付けて下さい!
・新聞の畳み方に気を付けて下さい。金正恩の顔の面を折り曲げないように。ホテルの部屋の中でもです!間違ってもお土産の緩衝材として使わないで下さい! そんな使い方したら間違いなく翌日消えています(お土産が? それとも僕たちがだろうか?)。
・聖書だけは絶対に持ち込まないで下さい。これだけは本当にお願いします(ここは一番真剣な話しぶりだった)。
・政治的な話も完全にNGです。ローカルの人には外国のニュースの話もしないで下さい。2年前のクアラルンプールの暗殺事件は誰も知りません。混乱するのでこうした話は絶対にしないで下さい!