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ベリンジャーとイエリッチ。
MLBの歴史に残る打撃レースに?
posted2019/05/11 09:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
AFLO
開幕後、およそ5週間。日本では打者・大谷翔平の戦線復帰でもちきりだが、今季の大リーグには注目すべき点がほかにも多い。
全般の傾向からいうと、5月5日現在、三振率が1試合当たり17.7個と14年連続で上昇している。(2018年が17.0個、'17年が16.5個)。一方、四球のレートを見ると、'17年が1試合平均6.52個、'18年が6.45個だったのに対して、今季は6.90個が記録されている。本塁打を打たれるくらいなら歩かせろ、併殺の機会も増えるはずだという考えがあるようだが、昨今のようにゴロが減ってしまっては、併殺も減るに決まっている。
打率はどうか?
今季の平均打率はいまのところ2割4分5厘で、'18年の2割4分8厘、'17年の2割5分5厘に対して、やや低下している。DH制が採用された1973年以降で見るとワーストの水準で、投手が圧倒的に優勢だった1967年(2割4分2厘)や'68年(2割3分7厘)にほぼ近い数字だ。
打率は低下も本塁打率は高い。
では貧打なのか、といわれそうだが、本塁打率は高い。'16年が、1試合当たり2.31本(年間合計=5610本)、'17年が2.51本(合計6105本)、'18年が2.30本(合計5585本)だったのに対して、今季は1試合当たり2.60本という高い数字になっている。
このペースで進めば、6300本前後の本塁打量産が予想される。「フライボール革命」の結果なのだろうが、四球と三振と本塁打が多くて、打率と併殺率が低い野球は、どうしても大味にならざるを得ない。
「アメリカの野球は変わってしまった」というイチロー引退時の慨嘆は、このデータにも裏付けられるのではないか。実際、13年間総額3億3000万ドルでフィリーズと契約したブライス・ハーパーなどを見ると、147打席で43三振、25四球、6本塁打、打率=2割3分3厘。映像で見ていても、空振りが多すぎて唖然としてしまう。