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令和に語り継ぐ、J平成名勝負(3)
~1999年CS:清水vs.磐田~ 

text by

飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byGetty Images

posted2019/05/07 11:30

令和に語り継ぐ、J平成名勝負(3)~1999年CS:清水vs.磐田~<Number Web> photograph by Getty Images

清水の象徴だった澤登正朗(右)に、磐田の有望株として台頭してきた高原直泰。静岡ダービーは熱く燃えていた。

風を読んで決めた27mの直接FK。

 ゴールまで約27メートル。普段なら狙わない距離だが、このときは違った。壁の位置も、GKの重心も、ニアサイドを警戒しているように見えたからだ。さらにもうひとつ、澤登が読み取ったものがある。

 このときピッチには、右サイドから強い風が吹いていた。のちに澤登は「この風を利用してファーサイドを狙えばイケるんじゃないか。そんな計算をしていた」と振り返っている。ボールをセットしてから助走に入るまで、わずか数十秒。その間に神経を研ぎ澄ませ、あらゆる情報を収集していたのだ。

 澤登が右足を振り抜くと、ボールは美しい弧を描き、サイドネットに吸い込まれた。起死回生の同点ゴールにサンバのリズムが蘇り、清水の選手に生気が戻った。

 39歳の鉄人サントスが獅子奮迅の働きでこぼれ球を回収し、途中出場のファビーニョがドリブルでチャンスを作る。延長戦にもつれ込んだゲームは延長前半9分、大榎克己の技ありパスからファビーニョがゴール右隅に決め、清水がVゴール勝ちを収めた。

PK戦で待っていた残酷な結末。

 ともにVゴール勝ちで、得失点差も同じ。PK戦に委ねられた勝負には、残酷な結末が待っていた。

 磐田が4人連続で決めたのに対し、清水の2人目、サントスのキックは甘く、GKに防がれた。さらに4人目、ファビーニョのゴール右上を狙ったキックが枠を大きく逸れていく。その瞬間、磐田の選手たちが喜びを爆発させた。

 数的不利な状況でチームを勝利に導いたふたりの功労者が、PKを失敗する――その不条理さも、この試合の印象を際立たせている。

「グラウンドの上ですべてを出し切った。守備から攻撃まで、これ以上できないくらい、自分が持っているものを全部出せた。だから、勝敗は関係ない。満足しています」

 試合後、澤登はこんな言葉を残したが、それは誰もが頷けるものだった。シーズンを通して最も勝点を稼ぎ、ベストイレブンに6人も送り込んだ清水が、この年のベストチームであることに異論はないはずだ。クラブ史を振り返っても、最も輝いたチームと言えるだろう。

【次ページ】 アジア王者・磐田が見せた意地。

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