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北アイルランドの古豪に世界が注目。
英国で唯一のEU加盟のクラブに!?
text by
アーメド・アルサラフAhmed al-Sarraf
photograph byKevin Morrison
posted2019/05/07 10:30
縦縞のユニホームを纏うデリー・シティFC。12試合を終えた時点(4月26日現在)で、アイルランドリーグ4位と好調をキープしている。
フリーパスだった移動も、選手の移籍も……。
では、EU離脱は、デリー・シティFCにどんな問題を生じさせるというのか。
スポーツ面に関しては特に問題はない。同クラブが今後もアイルランドリーグに参加し続けることは、FIFAとUEFA、北アイルランド協会およびアイルランド協会の間ですでに合意がなされているからだ。問題はむしろ連盟や行政、移動に関してである。シャムロック・ローバースやコーク・シティといったアイルランドのチームと対戦するために、これまではフリーパスだった国境を手続きをして越えねばならない。また選手の移籍も、今後はずっと複雑になる。
ただ、現地では楽観的な見方が支配的である。街もまたクラブも、もっと酷い事態をこれまでに何度も経験してきたからだ。テロ闘争が続いた'72年から'85年までの間、スタジアム周辺や市内での暴力にクラブもサポーターも悩まされた。そうした武力闘争に比べれば、EU離脱とそれに伴う諸問題はデリー市民を震撼させてはいない。クラブの熱烈なサポーターである市長のジョン・ボイルはこう語っている。
「離脱がチームに何も影響を与えないことを私は切に願っている。思うに最初の難関は選手の移籍だろう。EU圏内の選手がここでプレーするのがより難しくなる。誰も言及してはいないが、英国のすべてのクラブにとって深刻な問題になるだろう」
「サッカーとEU離脱は別だ」
ただ、彼の右腕で、クラブ会長も務めるフィリップ・オドハーティ――エンジニアリング会社のオーナーでクラブのパトロン的存在でもある――は、移籍に関してさほど心配してはいない。
「サッカーはEU離脱とは別だ。その点では健全に動いていくだろう」と彼は述べている。
ただ、そう語ったあとでオフレコとして、バックアップは不可欠であると付け加えるのを彼は忘れなかった。英国サッカーは、何の保障もなしには大海に漕ぎ出せないというのが彼の意見であった。