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北アイルランドの古豪に世界が注目。
英国で唯一のEU加盟のクラブに!?
text by
アーメド・アルサラフAhmed al-Sarraf
photograph byKevin Morrison
posted2019/05/07 10:30
縦縞のユニホームを纏うデリー・シティFC。12試合を終えた時点(4月26日現在)で、アイルランドリーグ4位と好調をキープしている。
雰囲気はリバプールに近い。
誇りとサッカーこそが、デリーではなによりもかけがえのないものである。それはデリーが対戦相手を迎えるホームスタジアム――収容人員7700人――のブランデーウェルに入ってみればよくわかる。西スタンドではサポーターが踏み鳴らす足音が響き渡り、振動はピッチにまで伝わらんばかりである。キャンディストライプス(デリー・シティの愛称)のプレーは熱を帯び、それがさらに観客の心と体に火をつける。
ここではサッカーは宗教であり、EU離脱という英国を救うはずの法的な措置とは最も遠いところにある。宗教であるサッカーは、街の歴史の根幹とも深く結びついている。パブやカフェ、スーパーマーケットでも、聞こえる会話はサッカーのことばかり。その雰囲気はちょっとリバプールに似ているといえるかもしれない。
ただ、デリー・シティFCはそれ以上の存在であり、アイルランド島全土にあまねく存在を知られている。ふたつの国を股にかけ、ふたつの宗教、ふたつの隣人たちの間にまたがって、うまくバランスを取りながら軽やかに活動しているクラブは世界でここだけだろう。
デリー・シティFCこそは、EU加盟国のリーグに所属する英国で唯一のクラブとなるのである。
「他に比類がないんだ!」
この叫び声こそが、デリーの誇りなのである。