ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
フランクフルトがEL準決勝進出!
長谷部誠との夢の旅路は終わらない。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2019/04/25 07:00
EL準々決勝でポルトガルの強豪、ベンフィカに競り勝ったフランクフルト。次なる相手はチェルシーだ。
「バクーだよ、バクー」
そんなフランクフルトサポーターは今、“あること”に思案を巡らせています。先日のホーム・ベンフィカ戦のチケットは「2万ユーロ(約260万円)出すと言われても人には譲らない」と言っていたシーズンチケットホルダーの知り合いが言っていました。
「決勝戦を観に行こうとしているんだけど、どこで開催するか知ってる? バクーだよ、バクー。どこの街か知らないって? アゼルバイジャンの首都だよ」
ちなみにフランクフルトからバクーまでは飛行機の直行便でも約5時間掛かります。「車じゃいけないよなぁ」という知人にグーグルマップを見せ「ポーランド、ウクライナ、ロシア経由で約4000キロ。51時間くらいで着くね」と言ったらガックリしていました。
とにかく、チェルシーとの準決勝の結果が分からないのに決勝の心配をしているのです。決勝進出が決まったら、果たして何人のサポーターがアゼルバイジャンの首都に乗り込むのでしょうか。気になります。
ドイツ語で賛歌を歌う友人を見て。
先日、ドイツで知り合い、かけがえのない友人となった知人がフランクフルトでの赴任生活を終えて日本へ帰国しました。彼は医者としてこちらの大学で約2年間研究に従事し、その任期を終えたわけですが、彼がこの街で充足感を得ていたひとつがアイントラハト・フランクフルトというクラブへの親愛でした。
「次はいつ来られるか分からないから」と言って観戦したホームゲームで、彼は地元の方々とアイントラハトの賛歌『Hymne』を高らかに歌っていました。しっかりドイツ語で。心から楽しみ、喜べる対象と巡り会えた友人の姿から、このスポーツが人々に与えられる素晴らしい魅力を見出すことができます。
僕も、この街と、そこに凛と立つクラブに魅せられています。フランクフルトの指揮官、アドルフ・ヒュッター監督がベンフィカ戦で勝利した後の記者会見で語った言葉が、胸に響きます。
「Unsere Reise geht weiter(わたしたちの旅は続く)」
その中心に長谷部誠という稀代のフットボールプレーヤーがいることを踏まえて、夢への旅路に思いを馳せたいと思います。