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フランクフルトがEL準決勝進出!
長谷部誠との夢の旅路は終わらない。
posted2019/04/25 07:00
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph by
Getty Images
フランクフルト市内が騒然としています。
なにせ、今季のアイントラハト・フランクフルトは、ブンデスリーガでチャンピオンズリーグ出場権を得られる4位争いを展開しているだけでなく、ヨーロッパリーグで準決勝進出。決勝を懸けてのチェルシーとの対戦が決まっているのです。
ELベスト8、ベンフィカとのホーム&アウェーは凄まじい激戦となりました。アウェーでの第1戦は、DFエバン・エンディッカの退場で数的不利な状況となって2-4で敗戦。しかし、ホームでの第2戦でフィリップ・コスティッチとゼバスティアン・ローデのゴールで2-0と快勝し、アウェーゴール差で勝ち上がりを決めました。
コスティッチの先制点は明らかにオフサイドだったのですが、スタジアムへ詰めかけたフランクフルトサポーターの圧倒的な迫力に、審判団も気圧されてしまったのでしょう。ELは決勝以外にVARが採用されていなかったことも影響しましたが、この判定に抗議した敵将ブルーノ・ラージ監督が退席処分を命じられたのは少し気の毒でもありました。
また、翌日のドイツメディアではオフサイドの件がほぼスルーされていたのもご愛嬌。自軍に不利な事象には触れないという不文律は万国共通で、これもサッカーの楽しみ方のひとつかもしれません。不利を被った側は、たまったものではありませんけども……。
「それ以上は前に進むな!」
ただ、今回のフランクフルトサポーターたちの“ある”振る舞いには感銘も受けました。第2戦で勝利して準決勝進出が決まった瞬間に、ゴール裏に陣取る大サポーターの一角がスタンドからグラウンドへ降り立ち、広告看板をなぎ倒して芝生の上に足を踏み入れようとしたのですが、彼らはそこでグッと踏みとどまってギリギリのラインで歓喜の雄叫びを上げたのです。
もちろん、スタンドに降りたのはいけないことです。看板をなぎ倒した件も反省せねばなりません。
しかし、さすが秩序を重んじる国民性。喜び勇んでピッチへ侵入して選手に抱きつくなどしたら混乱の極みに達し、結果、無観客試合などのペナルティが科せられる可能性もあることに思い至ったのでしょう。上半身裸の強面のあんちゃんたちが仲間に「おい、お前ら! それ以上は前に進むな!」と制する姿に、ドイツサポーターの気高い精神を感じたのは僕だけでしょうか。