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イチロー、意外すぎる告白。
「負けてばっかりでした」
posted2019/04/17 12:30
text by
宇賀康之(Number編集長)Yasuyuki Uka
photograph by
Naoya Sanuki
「死ぬときは笑って、というのが理想でした。でも、そんなこと、とてもできることじゃないとも思っていました。母国で最後のときを迎えて、本当に笑って終わることができた。あのとき、東京ドームにいたみんながそうさせてくれたんです」
引退は野球選手としての死だと表現してきたイチロー選手は、3月21日に東京ドームで迎えた「死」を、今、どう捉えているのか――。Number976号「<完全保存版>イチロー戦記。1992-2019」に掲載されている21ページにわたるロングインタビューの中で、彼はこの質問にそう答えた。
引退直後、小誌の求めにすぐに応じてくれて実現したインタビューが行われたのは、3月29日、シアトル。活字メディアでは引退後初の独占インタビューとなった。表紙を飾った撮り下ろしポートレートの撮影の様子を振り返りつつ、そのほんの一部を紹介したい(以下、<>内は、石田雄太氏執筆のインタビュー「長き戦いを終えて」からの抜粋)。
撮影場所は、シアトル郊外の公園。
<――現役を引退してから、どのような時間が流れているんでしょうか。
「時間に追われることのない、そんな時間が流れています。それと、シアトルに戻って2日目だったかな。寝違えちゃったんです。朝、起きたら首が痛くて。もし引退していなかったら、毎日が憂鬱で仕方がなかったと思います。もちろん痛みがあるから気にはなりますが、それでも、今までのように考えなくてもいいんだと思ったとき、改めて引退したことを実感しましたね」>
イチローさんは引退後もトレーニングを続けている。当日、撮影場所として指定されたのも、普段ランニングを行っているという、シアトル郊外の公園だった。
まだ現役感バリバリのスーパースターは、スーパーカーに乗って颯爽と我々の前に現れた。身に着けているのは、青のトレーニングウエアの上下。すぐに撮影が始まった。広い草地を駆け上がる姿を、前から、次は横から、シャッターを切る。いいね! いいね! 正面からまっすぐこちらに歩いてきてもらい、最後はピタッと止まって、笑顔も、ハイ!――ほんの十数分だったろうか。どのポーズも「決まってる」としかいいようがないショットが、次々とカメラに収められた。