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イチロー、意外すぎる告白。
「負けてばっかりでした」
text by
宇賀康之(Number編集長)Yasuyuki Uka
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/04/17 12:30
シアトルの公園を走るイチローさん。醸し出す雰囲気は、現役時と何ら変わっていない。
「最後のヒット」は撮れなかった。
3月14日発売の「イチローを見よ」、3月28日発売の引退緊急特集「イチローを見たか」、そして引退特集決定版の「イチロー戦記」。小誌史上初となる3号連続同一アスリート特集で、3号連続表紙を撮った佐貫直哉は、イチロー選手をデビュー以来ずっと撮影し続けてきた小社のカメラマン。ただ、佐貫カメラマンが撮りたかった「最後のヒット」は、東京ドームではついに出なかった。
<――それにしてもこの春は、あれほど当たり前のようにヒットを量産してきたイチローさんに1本のヒットがなかなか出ませんでした。改めて、ヒットを打つことの難しさをどんなふうに感じていましたか。
「ヒットを打つこと、これが難しいのは、(首位打者を大前提にされた)1995年以降、ずっと変わらないことです」>
「今回も、負けました」
イチロー選手がNumberの表紙を最初に飾ったのも、1995年の9月に発売された376号。イチロー選手に牽引されて同年リーグ優勝を果たすことになるオリックスブルーウェーブを初めて特集した一冊だった。21歳の初々しい表情が印象的なこの表紙から24年、メジャーでは過去誰も成し遂げていなかった10年連続200本安打をクリアし、2004年には262本のヒットを打ってシーズン最多安打記録を更新。WBCも連覇を果たすなど、勝ち続けてきた。だが……。
<――イチローさんは戦わなければならなかった戦いにはすべて勝った、という感覚をお持ちなんでしょうか。
「まったくそんなことはありませんし、今回も、負けました」
――今回?
「はい、この戦いに負けたから引退したんです。負けて終わりました」
――それはこの春、結果を出さなければ東京ドームのあとのシーズン、メジャーに残れなかったというところを指しているんですよね。
「そうです」
――負けたと感じたのは初めてですか。
「そんなわけありません。負けてばっかりです。ただ、負けてもそのあと向かっていって、その負けを覆してきました。でも今回は最後まで戦いましたが、結果で(東京ドームの開幕シリーズ後のメジャー契約を)勝ち取ることができなかったんですから、戦いとしては負けです」>