話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
大久保嘉人はまだ終わっていない。
今季“0点”でも笑顔でプレーする理由。
posted2019/04/09 11:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
J.LEAGUE
ジュビロ磐田が湘南に勝って、ようやく今シーズン初勝利を挙げた。
13位に順位を上げたが、まだ低空飛行を続けているチームと同様、最近、さっぱり名前が聞こえてこなくなった選手がいる。
大久保嘉人だ。
湘南戦もスタメン出場したが、ゴールを奪えず、今季は6試合を終えてまだ得点がない。大久保は、もう終わってしまったのだろうか――。
川崎フロンターレ時代の大久保は、まさに無双だった。
中村憲剛、小林悠、レナトら質の高い選手が周囲におり、大久保はフィニッシャーの役割を果たすことでゴールを量産。前所属した神戸では26試合で4得点('12年)だったのが、'13年に川崎に移籍してからは33試合26得点で得点王を獲得。
その後も大久保は点取り屋としての自信と凄みを見せつけ、3年連続得点王になった。'14年にはブラジルW杯に出場する日本代表にもサプライズで滑り込んだ。
名波監督のラブコールで磐田へ。
その後、'17年にFC東京に移籍し、'18年川崎に戻るも途中出場が増え、居場所がなくなった。「やめ時かなぁ」とそんなことも考えていたという。同年6月、名波浩監督から熱烈なラブコールを受け、磐田に移籍。しかし、チームではなかなか周囲の選手と連動した動きができず孤立し、苦しんだ。
「ボールが欲しい時に、そのタイミングで出してくれるチームって、フロンターレ以外にないなって感じたよ。ここでフロンターレのサッカーを求めているわけじゃないけど、苦しくなると蹴ってばっかりだからさ。それじゃ攻撃にならんでしょと思うことが多かった」
大久保は基本的にセンターFWに置かれていたが、ボールが出てこないので中盤に下がってプレーをしていた。それでは、なかなかゴールは奪えない。実際、昨年は17試合で3得点に終わっている。