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公務員志望からスペイン代表へ。
3部から這い上がったもう1人のマタ。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2019/03/30 11:00
後半終了間際にFWモラタ(左)に代わりピッチへ送り込まれたFWマタ(右)。短い時間での出場となったが、彼の背景は大きな話題を呼んだ。
税関職員になろうと……。
なのにマタは、ここで選手生活に終止符を打つことを考える。前述のとおり、サッカーで生活費を稼げるようになるとは思っていなかったからだ。4年前から通っていた職業訓練校で「経営・財務」と「貿易」を修めており、税関職員の仕事に興味を持っていた。
そこに、2部Bイェイダからの2年契約のオファーが届いた。迷った末、マタが選んだのは現役続行だった。
「あの年は深刻な経済危機の影響が公務員試験にも及んでいた。そこで『ただサッカーを楽しめばいいのかも』と考え、留学する学生のような気持ちでオファーを受けることにしたんだ」
イェイダはカタルーニャ自治州の内陸部にある町。慣れ親しんだマドリー周辺を離れざるを得なくなることも、マタにはかえって好都合だった。
「快適さに甘えていたから、独り暮らしをしてみたかった。おかげでより早く、より良い方向に成長することができた。選手としても、個人としても、素晴らしい経験だった」
1年目に14ゴール、2年目に15ゴールを決めたマタに、次に声をかけたのは当時2部所属のジローナだった。
舞い込んだ多数のオファー。
経済的な意味で遂にプロとなった彼は、現セビージャ監督マチンの期待に応え、自らも「違う仕事を始める前に、もう数年は楽しくプレーできそう」と思うに至った。
「ジローナとの契約が切れたら2部Bに戻ることになると予想していたけれど、2部のほぼ全チームからオファーをもらったんだ」
その中から選んだバジャドリーでの2年目となった昨季、自己分析によると「自信のせい」で大きく化けた。
「何もかもがうまくいった。相手ゴール前で触ったボールはほぼすべてネットを揺らしていた」