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工藤壮人が山口で示す存在価値。
「懐かしい感覚が、蘇ってきた」 

text by

石倉利英

石倉利英Toshihide Ishikura

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photograph byJ.LEAGUE

posted2019/03/28 16:30

工藤壮人が山口で示す存在価値。「懐かしい感覚が、蘇ってきた」<Number Web> photograph by J.LEAGUE

山口で輝きを取り戻しつつある工藤壮人。J1昇格へ、エースFWの活躍は不可欠だ。

苦渋を嘗めた海外移籍。

 公式戦でのゴールは広島時代の昨年8月22日、天皇杯3回戦の名古屋グランパス戦以来、約7カ月ぶりだった。

 小学4年生のときに柏レイソルU-12に入った工藤は、U-15、U-18と生え抜きコースを歩み、2009年にトップチームに昇格した。2年目から持ち味の得点感覚を生かしてゴールを重ね、'11年にJ1リーグ、'12年度に天皇杯、'13年にナビスコカップ(現ルヴァンカップ)と、全タイトル獲得に貢献。日本代表にも選出され、'13年の国際Aマッチデビュー戦でゴールを決めている。

 苦闘が始まったのは、メジャーリーグサッカーのバンクーバー・ホワイトキャップス(カナダ)に新天地を求めた'16年からだ。この年は5月に顎を骨折して2カ月戦列を離れ、復帰後も出場機会に恵まれず、リーグ戦成績は17試合2得点だった。

 広島でJリーグに復帰した'17年は、先発したリーグ開幕戦で先制点を決めたが、この試合に引き分けたチームは極度の不振に陥る。7月に森保一監督が退任してヤン・ヨンソン監督が就任。15位で何とか降格を免れたJ1残留争いの過程で、第25節以降はベンチ入りすらできず、リーグ戦成績は18試合3得点にとどまった。

昨年はプロ初ゴール以降、最低の数字。

 始動日に「このままでは終われない」と強い決意をにじませた'18年。城福浩監督のFWの第一選択肢は、高さ、強さ、突進力を併せ持つパトリックだった。堅い守備と、パトリックをメインターゲットに素早く敵陣のスペースを突く攻撃がかみ合った広島は、前年とは一転、開幕から驚異的なペースで勝ち点を積み上げていく。

 工藤は3月のルヴァンカップ初戦で2ゴールを決めるなど、結果を残してアピールを続け、リーグ戦で先発の座を勝ち取った時期もあった。ロシアW杯による中断明けの初戦、7月18日のJ1第16節・ガンバ大阪戦では先発してゴールを決めたものの、リーグ戦での得点は、これが最初で最後。成績はプロ2年目に初得点を挙げて以降では最低となる、12試合1得点だった。

【次ページ】 霜田監督との出会い。

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