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工藤壮人が山口で示す存在価値。
「懐かしい感覚が、蘇ってきた」
posted2019/03/28 16:30
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph by
J.LEAGUE
最終ラインで後方にターンした相手DFが、足元から一瞬ボールを離したスキを見逃さなかった。左足でボールをつついてDFと入れ替わり、ゴールに向かって左寄りからドリブルでペナルティーエリア内に侵入する。
「あの角度から左足でファーサイドに流し込むのは難しい。スピードのあるボールをニアサイドに蹴れば入るという、自分の感覚を信じて流し込みました」
左足から放たれたボールはイメージ通り、間合いを詰めてきたGKの右脇を抜いて、ニアサイドに決まった。3月17日のJ2第4節・愛媛FC戦の36分。0-2の劣勢を強いられていたレノファ山口は、今季サンフレッチェ広島から期限付き移籍してきたFW工藤壮人の加入後初ゴールで、反撃の狼煙を上げた。
開幕直前の骨折。
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開幕1週間前のプレシーズンマッチで右手の甲に重傷(右第2、3、4、中手骨骨折および橈骨茎状突起骨折)を負った。全治6週間程度との診断だったが、負傷個所を保護する器具をつけてベンチ入りし、開幕から2試合連続で途中出場。第3節からは先発に名を連ね、4試合目で初ゴールを決めた。
工藤のゴールも及ばずチームは1-2で敗れたものの、本人は試合をこう振り返った。
「0-2にされてチームが難しい状況になっていく中で、勢いづかせるゴールを決めることができたのは、今後につながっていくと思う。立ち上がりから集中していないと、相手のミスを突くこともできない。先発から出て長い時間プレーすることで、ディフェンスラインとの駆け引きなど、感覚が蘇ってきている感じがしています」
続けて、こう言った。
「本来なら、そうであってはいけないんですけど、懐かしい感覚です」
蘇ってきている。
懐かしい。
この2つの言葉が、近年の苦闘を物語っている。