炎の一筆入魂BACK NUMBER
切り札→レギュラーへ邁進中。
広島・曽根が狙う「ポスト菊池」
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/03/25 10:00
昨年の日本シリーズ第5戦では見事、ピンチバンターの役目を果たした曽根海成。
日本シリーズでのピンチバンター。
日本シリーズ第5戦では、同点の延長10回無死一塁の場面で新井貴浩の代打で打席に向かった。役割はピンチバンター。古巣相手に、前本拠地で、新天地の大黒柱の代打……。これまでにないほどの重圧が両肩に乗っていただろう。曽根はソフトバンク加治屋蓮の4球目を見事に三塁線に転がした。重要な局面での難しい役割を涼しい顔でこなしたようにも見えたが、極度の緊張は試合後になってもおさまらなかった。
「夜は緊張が残ってて、飯も食えなかったです。(バントを決めても)安心感はなかったです」。
初めて経験する極度の重圧だった。
途中加入で11試合、日本シリーズでも3試合に出場した。新天地1年目に初安打も初長打も、初盗塁も記録。充実感は数字だけでなく、表情にも表れる。
「やっぱり一軍と二軍とでは全然違う。二軍で何10試合出るよりも、一軍で1試合出た方が得られるものも大きい」
広島での半年で、曽根が得たものは計り知れない。
身体能力は野間以上。
迎えた'19年。その存在感は日に日に増している。春季キャンプでは上本崇司とともに大きな声を張り上げ、キャンプを盛り上げた。
ムードメーカーを演じる姿を緒方孝市監督は微笑みながら見守っていた。
「ひと皮むけたよね。良い意味でバカになることも必要。簡単にできることでもないだろう。ああいうキャラクターはチームには必要だから」。
2年目の変化に目を細める。
まだ23歳。選手としての伸びしろは十分ある。「身体能力は野間(峻祥)以上」。自ら惚れ込んで獲得した逸材以上の素質と認める、緒方監督の言葉が期待をさらに膨らませる。