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「祐希の妹」を脱却し、プロの道へ。
東レ石川真佑の笑顔が弾けた1本。 

text by

田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2019/03/24 17:00

「祐希の妹」を脱却し、プロの道へ。東レ石川真佑の笑顔が弾けた1本。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

3月9日に花巻で行われたファイナル8第3戦の対久光製薬でVリーグデビューを果たした。

兄・祐希「僕よりもずっとエリート」

 下北沢成徳に入学前、裾花中でも1年時からレギュラーとしてコートに立ち、長野選抜としても含めれば3度全国優勝を成し遂げた。そこから春高に3年連続で出場し、そのすべてでセンターコートに立った。それだけでも十分すぎるほどの戦績だが、1年時には全国優勝している。

 華々しいでは片づけられないほどの輝かしすぎる実績を持ち、兄で日本代表のエースでもある石川祐希も「妹のほうが僕よりずっとエリート」と評するほど。

 だが、真っ直ぐすぎるほど真面目な性格で、時にそれが仇となったと小川監督は振り返る。

監督も危惧していた“脆さ”。

「(黒後)愛や、(木村)沙織は、いい意味で図太い。だから強いんです。そういう選手にはむしろ、こちらが厳しくハッパをかけながら、時には鼻をポキっと折ることも必要です。でも真佑は違う。中学時代はトップダウン式に『こうしなさい』と言われた通りにやってきたこともあり、とにかく真っ直ぐ、ストレートにすべて受け止めてしまう。実は脆いんです。だから彼女には一度も、厳しい言葉をかけたことはありませんでした」

 勝たなければならない。自分が勝たせなければならない。

 春高が近づくにつれ、過剰なプレッシャーを背負っていることを小川監督も危惧していた。大会中に発熱し、準々決勝まではまともにプレーできる状況ではなかったことも、東九州龍谷戦との最終セットでサーブが入らなくなったことも、すべて「そうなる可能性も含んでいた」と振り返る。

 だからこそ、問われるのはこれから。小川監督はこう言った。

「小学生の頃や中学生の頃、指導者に押さえつけられてきた子供たちは、どうしても人の顔色をうかがいがちです。実際、真佑もそうでした。でも、これからより高いレベルで戦うにはそれでは戦えない。自分で考える力、そういう強さをここからの生活、人生で彼女には育んでほしいです」

【次ページ】 成長するために選んだ下北沢成徳。

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東レアローズ
石川真佑
下北沢成徳高校

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