バレーボールPRESSBACK NUMBER
「祐希の妹」を脱却し、プロの道へ。
東レ石川真佑の笑顔が弾けた1本。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKiichi Matsumoto
posted2019/03/24 17:00
3月9日に花巻で行われたファイナル8第3戦の対久光製薬でVリーグデビューを果たした。
春高準決勝、相手は東九州龍谷。
2019年1月12日。春高準決勝。
高校生のバレーボール選手ならば一度はその場に立ちたいと思う舞台が春高で、出場することができた選手にとって憧れは、準決勝以降、1面で試合が行われるセンターコートに立つことだ。
その憧れの場所で、三冠をかけて戦った。
戦前の予想ではインターハイ、国体を制した下北沢成徳が優勝候補の大本命。それを阻む相手がいるならばおそらく、前年の覇者であり、互いが「ライバル」と認め合う金蘭会だろう。
だが、そんな両者の前に立ちはだかったのが、東九州龍谷だった。
かつて何度も全国を制し、多くの選手を日本代表やVリーグに輩出したバレーボール界では名門と呼ばれる強豪校。どちらかといえばスピードやテクニックを武器とするのだが、下北沢成徳との準決勝は明らかに戦い方が違った。ネットに近いところで素早く動いて低いトスを打つ従来のパターンではなく、しっかり下がって助走を取り、高く跳んでボールをハードヒットする。
フルセットまでもつれ込む接戦に。
下北沢成徳・小川良樹監督が「東九州龍谷が素晴らしいバレーをした」と感服したように、エースの石川に対してもブロック、レシーブを連携させたディフェンスで徹底マーク。ブロックに当てたボールも後方で拾われ、間を抜けばそこにレシーバーがいる。試合はフルセットまでもつれた。
そして迎えた最終セット。石川がブロックの指先を狙ったスパイクがアウトと判定される。決まった、と思う攻撃が決まらず、相手に得点を与える。
記録上はたった1点なのだが、石川にとっては重い1点だった。
結果、セットカウント2-3で敗退。
「負けたくないっていう気持ちもあったし、自分に(ボールが)上がって来た時に『決めなきゃ、決めなきゃ』と思っていたけど決まらない。セットの入り方がすごく大事なことがわかっていたし、みんなが信頼して上げてくれたのに、決めきれなかった。あそこで決められないのが、自分の弱さなんだと思いました」