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パルマ、4季ぶりのセリエAは上々。
年俸総額でロナウド1人に負けても。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2019/03/20 16:30
アーセナルで2シーズン9得点、ローマでは3シーズン17得点。ビッグクラブ、中国でのプレーを経て、円熟期を迎えたジェルビーニョ。
王者ユーべからもぎ取った勝ち点1。
ロングランだけではない。22節で敵地アリアンツ・スタジアムに乗り込んだユベントス戦では、7連覇王者に赤っ恥をかかせた。
試合は惑星最強の男C・ロナウドに2ゴールを喫し、1-3の圧倒的劣勢。なのに、パルマは意気消沈するどころか、残り20分を切ってもコンパクトにシャープに、攻めに攻めた。
ユーベ堅守の象徴である“守備のBBCトリオ”不在という椿事はあったけれど、僚友FWイングレーゼの名相棒ぶりも相まって、ジェルビーニョは74分の芸術的ヒールショットで反撃。さらに不屈のユベントスのお株を奪うように、93分目のカウンターから3-3とする同点弾を叩き込んだ。
絶対王者ユーベが今季ホームで3失点も喫したのは、このパルマ戦だけだ。
チーム全体の給料がロナウド以下。
C・ロナウドを抱えるユベントスの選手年俸総額は2億1900万ユーロ(約277億円/税込)に上り、チーム別ランキングでもダントツの首位を誇る。
翻って、ランキングで16番目にあたるパルマが今季予算に計上できたのは、選手全員で2300万ユーロ(約29億円/税込)に過ぎない。チーム全員どころかテクニカル・スタッフ、クラブ職員全員分の給料を合わせても、C・ロナウド1人の手取り額(3100万ユーロ)にすら遠く及ばない。
ナポリにもインテルにもできなかった、アリアンツ・スタジアムで勝ち点1を奪い取るという難業を昇格組パルマと31歳の快足FWがやり遂げたのだ。
「昔は加減を考えずに突っ走って、いざゴール前に来たらシュートを蹴る力が残ってなかった、って失敗を何度もした。中国にいる間に十分リフレッシュして、フィジカルの調整をすることができたし、今はダベルサ監督からは守備も免除してもらってる。その分、ゴール前で冷静になれ、と口酸っぱく要求されているけどね」
帰ってきた“セリエAのボルト”のカウンター攻撃は、パルマファンならずとも胸がすく思いがする。
だが、なぜ彼は中国で約束されていた潤沢なサラリーで、残りのサッカー人生を悠々と過ごすことを選ばなかったのだろう。
「次のW杯に出たいんだよ」
コートジボワール代表として'14年ブラジルW杯で日本代表と対戦し、2-1の逆転決勝ゴールを奪ったのがジェルビーニョだった。
たびたびキャプテンマークを巻いて臨んだロシアW杯アフリカ予選に敗れ出場を逃した悔恨が、カタールW杯の年には35歳になるはずのジェルビーニョを今、突き動かしている。