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長谷部誠の情熱はルーキーのよう。
「35歳になっても持っていたい」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2019/03/19 11:00
ELでベスト8進出を果たしたフランクフルト。長谷部誠はその中心として充実の時を送っている。
イタリア在住記者も驚くリベロぶり。
ニコ・コバチ前監督によってリベロにコンバートされた35歳は今、かつてない存在感をドイツで放っている。キッカー誌の採点では、今季前半戦のDF部門でトップに立った。
高評価を受ける中で、長谷部は自身の強みを「経験」と自己分析する。例えば監督がベンチ入り禁止となったミラノでの試合では、監督の代わりという使命感を持ってピッチに立った。
「今日は監督がいなかったので、ピッチの中で指示を出すことはもちろん、色々やらなくては、と思っていた。自分の経験が、ここにきてすごく生きていると思います」
インテル戦でリベロを務めた長谷部に対して、イタリア在住の記者は「あのポジション、ずっとやってきたわけじゃないですよね」と驚いていた。周りを動かし、長谷部自身はシンプルにプレーする。そして読みも的確で無駄がない。記者が驚くのも無理はない。
以前、岡崎慎司や酒井高徳に取材した際、彼らは長谷部について異口同音にこう話していた。
「長谷部さんは今、注目を集めているけれど、ここに至るまでには悔しい想いをたくさんしてきた。急に活躍し始めたわけじゃない」
「巡り合わせがとても大きい」
ドイツに渡って以降、長谷部は主戦場のボランチで起用され続けてきたわけではない。時にはサイドバックを務めるなど、与えられた仕事を懸命に果たしてきた。
転機となったのは、残留争いに巻き込まれた2015-2016シーズンだった。コバチ監督就任後にボランチに固定され、チームは2部との入れ替え戦に勝利した。リベロとして起用され始めた翌シーズンはリーグ11位。そして昨季はリーグ8位ながらドイツ杯優勝を飾った。その時期から今にかけての充実ぶりについて、長谷部はこう語っている。
「本当にサッカーは、タイミングや巡り合わせがとても大きいなと思う。残留争いをしたこともあれば、去年はこの年齢でカップ戦も優勝できた。今はヨーロッパの舞台でここまで勝ち上がれて、僕のキャリアのなかでも一番充実している。
そこには自分だけじゃなくて、周りの選手との兼ね合いもある。若い選手が伸びているからこそ自分も生きている。周囲の選手や監督など、そういった巡り合わせが大きい」