ベンチ外になって湧いた闘争心。

　しかしそのコバチ監督は昨季限りでフランクフルトを去り、クラブは変化の時を迎えた。長谷部自身もロシアW杯後、日本代表引退を公言して新シーズンに臨んだ。

　しかしリーグ戦開幕前、ドイツ杯1回戦では4部のウルムに敗れている。その試合にリベロで先発した長谷部は、リーグ開幕から3試合連続で出場なし。第4節で先発復帰したが、チームは5節終了時点で1勝1分3敗の成績だった。

「ワールドカップが終わって、シーズン最初はモチベーションで難しい部分がありました。監督ともそういう話をしたけれど、理由がどうあれメンバーから外されるというのはね……。でもそれが自分の負けず嫌いさを刺激して、闘争心にも火が付いた。代表という場所に区切りをつけたし、僕にとって今シーズンは真価が問われるシーズンだと思っています」

　それでもシーズンが進むにつれて、新たな状況の恩恵に気づきはじめた。代表招集がないため、Aマッチウィークに日本へ戻る必要がない。その影響は身体だけでなく、メンタル面で大きかったのだという。

「クラブに集中しているし、代表ウィークは家族とゆっくり旅行へ行ける。自分にとって新しく、いいリズムだなと感じています。それが自分のパフォーマンスにも出ていると思う。もちろん、代表でプレーすることというのは常に誇りだったし、喜びを感じていた。だからこそ、今は自分のなかで『新たな章』が始まったと感じています」

ELでどこまでいけるか楽しみ。

　フランクフルトは冬の移籍マーケットで積極的に守備陣の補強を図ったが、長谷部は動じていない。

「ライバルが入ってきても、自分のやることは変わらない。ドイツでは移籍期間ごとに、夏も冬もライバルが入るのが当たり前だから。そこはあまり気にしないし、自分のパフォーマンスには自信を持っているので」

　守備陣やボランチの顔ぶれが毎試合のように変わっても、長谷部はピッチに立ち、仲間を統率し続けている。

「シーズン後半戦は負けてはいないけれど、引き分けが結構多かった。ただここに来て、勝ち切れる試合が多くて、いい流れになっている。代表ウィークの間に、心身ともにしっかり休んで連戦の疲れを取って、ラストスパートしたい。

　リーグもチャンピオンズリーグが狙えるし、ヨーロッパリーグもベスト8。こんなに個人もチームも充実しているシーズンはあまりないですから。自分たちがヨーロッパリーグでどれくらい行けるか、楽しみで仕方ないという感じですね。この年齢になるとこういうチャレンジが何度もできるわけじゃないから。最後までチャレンジしていきたい」

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