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インドとパキスタンの間でサッカーを。
レアル・カシミールが歩む数奇な運命。 

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ロムアルド・ガデベク

ロムアルド・ガデベクRomuald Gadegbeku

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photograph byFacebook/RealKashmirFC

posted2019/03/12 07:30

インドとパキスタンの間でサッカーを。レアル・カシミールが歩む数奇な運命。<Number Web> photograph by Facebook/RealKashmirFC

昨季インドリーグ2部を制し、2018年には1部リーグでいきなりの3位! カシミール地方の誇りとなった“雪豹”たち。

イスラム、ヒンドゥー、仏教、キリスト教……。

 イスラム教とヒンドゥー教、仏教、キリスト教にシーク教徒までが共存するこのクラブは、まさに「虹」のグループだとマラジは言う。

 インドでただ1つのイスラム教徒が多数派を占める州で、クラブの会長にはイスラムもいればヒンドゥーもいるという。その多様性が、民衆の広範な支持に繋がっている。

 1万5000人収容のスタジアムは常に満員の観衆で埋まっている。ときにその熱狂は、スタンドの外にまで及ぶ。

 身長201cmのコートジボワール人ストライカー、グノエレ・クリゾ(21歳)は驚きを隠しきれなかった。

「しばしばスタジアムの外も、スタンド以上に大勢のサポーターで溢れているんだ。僕らは本当に愛されている」

いきなりリーグ3位の好成績!

 今季のスノーレオパルズは、昇格1年目ながらIリーグ3位という好成績を収めた。

「目標は1部残留だったから、それは成し遂げることができた」と、ダニッシュ・ファルークは満足げに語った。

 共同経営者の1人、シャミム・マラジのオフィスの引き出しには、「JKポリスFC」など'70年代まで地域を代表していたクラブたちの記事の切り抜きが大事に保管されている。

「内戦が始まる1979年までは、カシミールではサッカーがクリケットを大きく引き離してNo.1スポーツだったんだ」とマラジは言う。

「カシミール出身の選手は全国に散らばり、そのうちの1人は代表のキャプテンにまでなった。今日では考えられないことだ」

 アブドゥルマジェド・カクルーがその選手で、'80年代インド最高選手との呼び声も高かった。

 だが、彼のキャリアは突然終わりを告げた。

 ある日、練習に向かうと、警官にカシミール地方のテロリストという容疑で逮捕された。数時間後には釈放されたものの、その後は当局からはずっと目をつけられ続けて、25歳で短い現役生活を終えたのだった。

 多くの選手が彼と同じ道を辿った。

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