フランス・フットボール通信BACK NUMBER
偉大なる“キング”ペレ、大いに語る。
ネイマールよりムバッペがお好き!?
posted2019/03/10 10:00
text by
エリック・フロジオEric Frosio
photograph by
DR
『フランス・フットボール』誌と“キング”ペレは、長年、良好な関係を保っている。ひとつの媒体のインタビューにはほとんど応じないペレも、『フランス・フットボール』誌に対しては回数こそ多くはないが幾度か胸襟を開いて取材に応じている。
同誌1月15日発売号に掲載されているのは、ペレの最新インタビューである。自身の近況と「後継者」と自ら認めるキリアン・ムバッペやネイマールについて、ペレが心境を語った。
監修:田村修一
新設されたペレ・アカデミー。
ペレはこれまでの人生において、望みうるほぼすべてを成し遂げてきた。最後の望みは、自身の名を冠したアカデミーの創設だった。そのアカデミーの設立セレモニーが、昨年12月11日、リオとサンパウロの間に位置する人口12万2000人の街レゼンデで盛大におこなわれた。
アカデミーではおよそ180人の7歳から18歳の子供たちが、教育の機会を与えられサッカーの指導を受けてプロを目指す。子供たちに援助の手をさしのべるのは、50年前にマラカナンでPKにより1000得点を決めて以来の彼の夢であった。
「貧しい人々、貧困に喘ぐ子供たちを救わねばならない。援助を必要とする人々のことをもっと考えるべきだ」
1969年にペレはラジオのレポーターにそう訴えかけた。そして今日、彼はこう語っている。
「当時、私の言葉に人々が耳を傾けていたら、ブラジルは今のような状況に陥ってはいなかっただろう」
新設されたペレ・アカデミーは、10万平方メートルの敷地に6面のピッチとひとつの学校を備えた最新の施設であるが、それで根本的な問題が解決するとペレ自身は考えてはいない。それでも彼はいう。
「これは一滴の水に過ぎないかも知れないが、それでも意味のあることだ。もう待ち続けるわけにはいかない。教育は子供たちを助け、われわれの国を助けるだろう」
1年のほとんどを過ごすブラジル・サンパウロ郊外のグアルハからヘリコプターで駆けつけた78歳のペレは、子供たちにメダルを授与し、自らの銅像の除幕式をおこなった。
その像は、17歳で世界チャンピオンとなった若き日の自身の姿を表していた。喜びに満ちたその顔は、彼の新たな後継者と言われるキリアン・ムバッペに少し似ていた。
セレモニーの直後、独占インタビューのためにわれわれを迎えたペレは、疲れた表情を見せながらも施設のオープンにあたってのフランスの援助に感謝するとともに、能力を高く評価するムバッペについてもこう述べたのだった。
「彼が2度目のワールドカップを獲得したら、私は心から満足する」と。
生きる伝説とのインタビューはこうして始まった。