「さすが早稲田の野球部」と。

　小宮山監督は「早稲田のあるべき正しい姿」というフレーズを、インタビュー中に何回か口にした。

「正しい姿というのは、より上のレベルを目指すために研ぎ澄まされた状態でグラウンドにいること。その集合体が望ましい組織です。勝たなきゃいけないんだけど、勝つことは二次的なことだと思う。社会に出た時に『さすが早稲田の野球部を出ている』と言ってもらえる、そんな人を育てて次に繋いでいくことが使命だと思ってる」

　学生たちはグラウンドのネット裏にある安部磯雄・初代野球部長と、野球の父と言われる飛田穂洲・初代監督の2人の胸像の前を通るとき、帽子を取って首を垂れるようになった。小宮山監督に至っては立ち止まって直立不動、最敬礼だ。

　胸像を囲む花壇のツツジは、ゴールデンウィーク辺りの開花だろうか。その頃、春のリーグ戦は中盤の正念場を迎えている。

　先人から受け継いだ気概と今時の学生の気質が融合できれば、早稲田のルネッサンスが、そして、新しい年号の下での最初の優勝が果たされるだろう。