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大坂なおみの成長とサーシャ“卒業”。
成熟度で変化するコーチとの関係性。
posted2019/03/06 17:30
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Getty Images
大坂なおみがサーシャ・バインコーチの解任をSNSで発表したとき、ファンの方々の多くがそうであったように、筆者も困惑し、冗談で投稿したのかと疑った。解任の理由が思い浮かばなかったからだ。
優勝した全豪オープンでも予兆がなく、腑に落ちない関係解消だった。
その後、大坂が関係解消についてコメントし、続いて新コーチの就任が明らかになった。解任の意図を推し量る材料も増えたので、ここで筆者の見立て、1つの仮説を記したい。
勝利よりも大切にしたかったもの。
サーシャの解任後、初めて出場したドバイの大会で、大坂は「幸せでいる以上の成功は望んでいないし、私を幸せにしてくれる人たちと一緒にいたかった」と話した。
哲学的というか、判じ絵のようで、しっかり読み解かないと真意は見えてこないが、サーシャとの仕事にストレスを感じるようになったと受け取るべきだろう。
勝っている間は戦い方を変えない、は勝負の鉄則だ。このままサーシャとやっていればより大きな成功が望めるかもしれないが、自分を押さえ付けてまでそうしたいとは思えない、そんな心情が読み取れる。「彼といると自分もポジティブになれる」と相性の良さをアピールしていたが、いまやサーシャはそういう存在ではなくなっていたのだろう。
新コーチのジェンキンスは、昨年までビーナス・ウィリアムズのヒッティングパートナーをつとめ、今年から全米テニス協会の女子担当ナショナルコーチとなった。
指導実績の豊富な著名コーチの誰かがサーシャのあとがまに座るという観測もあった。全仏のクレーやウィンブルドンの芝を攻略するために、戦術が指導できるコーチを招くのでは、という見方もあった。