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日立台にネルシーニョが帰ってきた。
名将はピッチの内も外も掌握する。
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/03/06 08:00
苦しみながらも開幕2連勝と好スタートを切った柏レイソル。名将・ネルシーニョのもと、1年でのJ1返り咲きを狙う。
チーム創りは「街づくり」に通じる。
J1復帰即優勝を成し遂げた2009年から'14年の第1次政権でも、そうだった。栗澤僚一と大谷秀和のダブルボランチは、中盤と最終ラインの間のスペースを堅実に埋め続け、フィニッシュに絡む場面はほとんどなかった。工藤壮人とレアンドロ・ドミンゲスが、しっかりと決めるのだから、わざわざリスクを冒して攻め上がる必要はないのだ。
それぞれが自分の役割をしっかりと理解すれば、やがてお隣さん同士の付き合いが上手くいくようになる。第1次政権のときに監督に近い関係者が説明してくれたことだが、ネルシーニョのチーム創りは「街づくり」にも通じるものがある。
第1次政権では右サイドでレアンドロ・ドミンゲスと酒井宏樹のコンビネーションが生まれ、続いてレアンドロと最前線の工藤壮人の連携が成熟。ピッチの11人がしっかりと連携した、非常にバランスのいいチームを創り上げた。
個々が自分のやるべきことをしっかりと実践すれば、自然とチーム力は大きくなっていく。こうした基礎ができてくると、今度はネルシーニョの采配が生きてくる。
冷静で、柔軟なネルシーニョの目。
国民みんな監督といっていいブラジルで確かな実績を残し、日本を含めると35年という監督キャリアを築いたネルシーニョのいちばんの強みは、町田戦でも見せた柔軟な対応力にある。
彼は対戦相手との力関係を冷静に分析し、ボールを持つのが難しいと考えれば勇敢に撃ち合うような愚かな真似はしない。迷わず5バックを選択し、後方の安定を担保したところから敵の隙を突いていく。
第1次政権でも巧みにシステムを使い分け、ゼロックス・スーパーカップ、天皇杯、ナビスコカップ、スルガ銀行チャンピオンシップとタイトルマッチをことごとく制した。